HRN通信 ~「今」知りたい、私たちの人権問題~

日本発の国際人権NGOヒューマンライツ・ナウが、人権に関する学べるコラムやイベントレポートを更新します!

刑法性犯罪規定の改正に向けて~④HRNは性的姿態の撮影行為に対する処罰規定の創設を求めます~

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同意がないまま性行為が行われたにも関わらず、加害者は罪に問われず、多くの被害者が泣き寝入りを強いられている事実を知っていますか?

2017年に始まった#MeToo運動を受け、日本でも性暴力被害者が声を上げ始めました。

2017年6月には、110年ぶりに性犯罪に関する刑法が大幅改正されました。

しかし日本の法制度はいまだ国際水準に遠く及んでいません。

 

2021年は、刑法性犯罪規定の改正に向けて重要な意味を持つ年です。刑法が改正され、性暴力の被害者が正当に守られる社会を実現するために今一度声をあげる必要があります。2021年が変化の年になるように、という思いを込めて#2021tochangeのハッシュタグを作成しました。

 

 

 

 

 

1. 性的姿態の撮影行為とは?

 

・被害者に気づかれずに撮影をすること(盗撮)

・強制性交などの犯行場面の撮影すること

・被害者に強要して出演させたアダルトビデオ(AV)を撮影すること

・性的な目的でスポーツ選手を撮影すること

・子どもの水着姿やブルマ姿を撮影すること

などを合わせて性的姿態の撮影行為と呼んでいます。現在の日本では同意のない性的姿態の撮影行為に対する処罰規定がないため、下着の盗撮画像、アスリートの性的姿態の無断撮影、児童ポルノとして捕捉されない少年少女の性的姿態の動画・画像撮影による被害に対処できていません。一方で、インターネットの普及によりこれらのデータが半永久的に流通・氾濫している事態が起きており、同意なく性的姿態を撮影された被害者の不安や恐怖は拭えぬほど大きくなっています。

 

2. AV出演強要問題

 

近年「モデルにならない?」などと声をかけられ、契約書にサインをするとAVへの出演を強要される事例が相次いでいます。拒否しようとすると「契約だから仕事は拒絶できない」「違約金を支払わせる」「親にバラす」と脅されAV出演を半ば強要するといった悪質な手口が横行しています。AV出演を強要された結果、深刻なPTSDに苦しめられたり、いつまでもビデオが販売され、誰にも見られたくない映像がインターネット上で公開され続けることを苦に自ら命を絶ってしまったり、整形手術を繰り返したりと被害状況は深刻です。

 

被害者の無知や厳しい金銭的状況につけ込んで無理やりAVに出演させることは、被害者の同意に基づいているとは言えず、重大な人権侵害行為です。被害を受けた当事者たちが救済を求めて声をあげはじめたことから、AV出演強要は大きな社会問題として扱われるようになりましたが、問題に対処できる法整備は未だなされていないままです。

 

ヒューマンライツ・ナウはAV出演強要に関する被害実態を明らかにすること、法的な処罰対象とすること、被害者を救済できる法整備などをかねてより求めてきました。出演強要により動画の撮影、販売、頒布を処罰するとともに、加害者が持っているデータを削除・没収できる法的な仕組みの設置が必要です。

 

3. 法律はどうなっているの?

 

日本の現行刑法には、性的姿態の撮影行為を処罰できる規定がありません。軽犯罪法都道府県等による迷惑防止条例によって盗撮などが罪に問われることがありますが、処罰が軽い、処罰対象が狭い、自治体によって決まりに幅があるなどの問題があります。

 

元配偶者・交際相手への腹いせに、過去に撮影した性的姿態のデータを公表させるリベンジポルノは私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(通称:リベンジポルノ防止法)で処罰される対象です。しかしこの法律による刑罰は懲役刑と罰金刑のみで、罪に問われた加害者が持っているデータの削除・没収は限定的にしかなされていません。プロバイダーに削除要請をすることで、インターネット上に頒布されたデータの消去を求めることはできますが、性的姿態を撮影されたこと、およびそのデータを公表されたことで深く傷ついた被害者自らがデータを探し出し、削除要請をすることは簡単ではありません。こういった現状に鑑みると、リベンジポルノ防止法は被害者に対する救済制度としての役割を十分に果たしているとは言えません。インターネットの利用状況、そしてインターネット空間に性的姿態を撮影したデータが溢れている現状に向き合い、撮影とデータの公表を取り締まるだけでなく、データの削除や回収を含めた被害者救済制度をつくる必要があります。

 

4. 私たちが性的姿態の撮影行為に対する処罰規定の創設を求めている理由

 

刑法改正に向けた検討会でも性的姿態の撮影行為に関する処罰規定創設の必要性が多くの委員の間で共有されましたが、反対意見も出されました。しかし、性的姿態を撮影されたことやAV出演を強要されたことのトラウマに苦しみ、データがいつどこで拡散されるかと怯えながら生活している被害者を守れるのは、性的姿態の撮影、公表、頒布を処罰対象とし、またデータの削除・没収ができるようにする法整備しかありません。

 

数多く報告されているAV出演強要被害の実態を明らかにし、同意のない性的姿態の撮影行為を処罰できるようにしなければなりません。相手の同意がないのに性的姿態を撮影することは、それだけで被害者の性的尊厳を踏みにじる行為です。そして撮影されたデータを加害者や第三者が保持し続ける限り、被害者は傷つけられ続けます。長期にわたって被害者を苦しめ続けるこの問題を終わらせるために、性的姿態の撮影だけでなく撮影、販売、頒布をも処罰対象とし、データを速やかに回収できる仕組みを整備する必要があります。ヒューマンライツ・ナウは、性的姿態の撮影行為に対する処罰規定の創設を求めます。

 

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【声明】被害の実態に沿った法改正という原点はどこへいったのか?性犯罪に関する刑事法検討会の取りまとめにあたって

 

刑法が改正されるかもしれない2021年、性犯罪被害の実態に沿った刑法改正の実現のためにもう一度声をあげる必要があります。今後も#2021tochange のタグをつけて、ヒューマンライツ・ナウが求める刑法改正のポイントをSNS・ブログにてご紹介します。

 

ヒューマンライツ・ナウの過去の活動はこちらからご覧いただけます。

【提言】私たちが求める刑法性犯罪規定改正案(改訂)

10か国調査 性犯罪に対する処罰 世界ではどうなっているの?〜誰もが踏みにじられない社会のために〜

 

AV出演強要問題に関するヒューマンライツ・ナウの取り組みはこちらからご覧いただけます。

AV出演強要被害をなくすために

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ヒューマンライツ・ナウは、日本発の国際人権NGOです。

世界でも最も深刻な人権侵害を調査し、声をあげられない被害者に代わって告発し、解決を求めて国際的な活動を展開しています。

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