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【イベント報告】4月16日(土)ウェビナー「~これでいいのか法制審~刑法性犯罪規定改正の現状を問う」第2回目:性交同意年齢

ヒューマンライツ・ナウ(HRN)は2022年4月16日(土)にウェビナー「〜これでいいのか法制審〜刑法性犯罪規定改正の現状を問う 第2回目:性交同意年齢」を開催いたしました。

 

 

本ウェビナーは、4月9日(土)開催の第1回目ウェビナーに続く、刑法性犯罪規定改正の現状に関するウェビナーの第2回目になります。前回に引き続き、HRN女性の権利プロジェクトチームの中山純子弁護士が、性犯罪刑事法検討会で被害の実態に即した刑法改正がなされるかについて、緊急に問題提起をしました。

 

第1回目ウェビナーの報告については、こちらご覧ください。

 

 

PART Ⅰ 性交同意年齢の改正案について

はじめに、法制審議会の概要について簡単に説明しました。詳しくは、3/9イベント報告法務省HPをご覧ください。

現在、法制審議会では、諮問第117号について議論がなされています。諮問第117号には主に10個の論点があり、全論点について1巡目の審議が終わっています。

 

今回は、論点の一つである「いわゆる性交同意年齢の引き上げ」について取り上げました。

 

条文案

はじめに、「いわゆる性交同意年齢の引き上げ」の改正案が紹介されました。

現在、法制審議会では以下の3つの条文案が提案されています。

 

表1

A案

B案

C案

16歳未満の者に対し、性交等をした者は、5年以上の有期懲役に処するものとする。

(1案)

16歳未満の者に対し、性交等をした者は、5年以上の有期懲役に処するものとし、13歳以上16歳未満の者に対し、性交等をした場合のうち、一定の場合については、処罰から除外する。


(2案)

16歳未満の者に対し、性交等をした者(13歳以上16歳未満に対してした者については一定の場合に限る。)は、5年以上の有期懲役に処するものとする。

14歳未満の者に対し、性交等をした者は、5年以上の有期懲役に処するものとする。

 

なお、B案における「一定の場合」の例としては、以下が提案されています。

  1. 相手方の脆弱性や行為者との対等性の有無 
  2. 相手方と行為者の年齢差
  3. 行為者の年齢

 

性交同意年齢を引き上げるにあたっての課題

主な課題

次に、法制審議会において性交同意年齢引き上げのどのような点が課題とみられているのかを説明しました。

 

法制審議会の議事録などによると、「現行法からの引き上げの実態的・論理的根拠」に関して盛んに議論がされているとのことです。

 

実際に引き上げの根拠として挙げられているのが、以下の2つです。

 

  • 判断能力の未熟な青少年の保護・青少年の健全育成
  • 13歳以上の者であっても、脆弱性・未熟性を有していて、その脆弱性・未熟性に付け込まれることからの保護

 

1つ目の「判断能力の未熟な青少年の保護・青少年の健全育成」は、青少年は性行為を行うことについて長期的な不利益に対する理解が十分でなく、同意のための十分な判断能力がないため保護が必要であることを意味します。

 

2つ目の「13歳以上の者であっても、脆弱性・未熟性を有していて、その脆弱性・未熟性に付け込まれることからの保護」は、現行法の保護が及ばない13歳以上の者であっても、判断能力が一定程度欠けることがあるため保護が必要である、という考えを意味しています。対象年齢を引き上げたうえで除外規定(B案)を設ける場合、行為者が誰であっても対象者(性交同意年齢未満の者)の未熟な判断能力、脆弱性・未熟性に保護が必要なのは変わらないため、除外規定を設けることと対象年齢を引き上げることの論理的な整合性が必要である、と考えられているようです。

 

16歳未満に引き上げる場合、除外規定が必要な理由

続いて、16歳未満に引き上げる場合の除外規定が検討されている理由について説明しました。

 

刑法により14歳以上は刑事責任能力に達した者として扱われます。この場合、刑事責任能力のある16歳未満の者同士、例えば14歳と15歳の性的接触(176条も含む、例:キス)について、犯罪にあたるとして全件家庭裁判所に送致するのか、といった疑問が生じます。

 

これに対する積極的な意見としては、

  • 中学生同士の性的接触は背後に家庭環境の問題が潜む場合がある
  • 加害的な場合は早期に介入して治療や支援につなげる必要がある

 →家庭裁判所が介入して手当をすべきである

が挙げられています。

 

消極的な意見としては、

  • 家庭環境のみならず、恋人関係・何らかの理由から相手を真摯に求める場合についても犯罪を構成して良いのか
  • 14,15歳の者が強制性交等をした場合の故意や責任能力に影響を与えるのでは

 →被害者になった場合は、年齢一律で判断能力はないが、加害者の場合は、 悪い人だから判断能力は十分です、ということになり説明不十分である

といった意見があります。これらの理由から、除外規定を設ける場合には、引き上げる根拠との整合性が必要になると考えられます。

 

引き上げに際しての整合性がとれない場合

次に、仮に性交同意年齢を引き上げるにあたって整合性がとれないとなった場合、全体でどのような方向性で進んでいくのか、について説明しました。

 

まず「判断能力の未熟な青少年の保護・青少年の健全育成」を理由に性交同意年齢を引き上げ除外規定との整合性がとれない場合については、刑法ではなく児童福祉法の領域に任せるべきという意見がありました。

 

しかし、児童福祉法では、児童に淫行させる行為のみが処罰対象であり、刑罰として10年以下の懲役・300万円以下の罰金となっています。また、青少年保護条例においても、みだらな性交又は性交類似行為に限定されており、刑罰は2年以下の懲役・100万円以下の罰金とされています。中山は、児童福祉法の領域に任せるという結論で、十分な児童の保護ができるのか疑問が残ると主張しました。

 

次に「13歳以上の者であっても、脆弱性・未熟性を有していて、その脆弱性・未熟性に付け込まれることからの保護」を根拠に性交同意年齢を引き上げる場合です。この場合、付け込まれる場合を類型化して規定しようという意見が出されており、地位関係性利用等罪の部分で足りるという意見があります。

 

しかし、前回ウェビナーでも指摘したとおり、中山は地位関係性利用等罪は177条・178条のA-2案に内包されてしまうので、必要ないと結論づけられることに対して中山は懸念を示しました。*1このとき、仮に性交同意年齢が現状の13歳未満を維持もしくは14歳未満までの引き上げに留まる場合、地位関係性利用等罪は177条・178条に包摂され不要と判断され得ることになります。現在、多数の方が支持している177条・178条A-2案の条文は以下のようになります。

 

「次の事由その他の事由により、拒絶する意思を形成・表明・実現することが困難であることに乗じて、性交等をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処するものとする。」

 

中山はこのA-2案が採用された場合、「拒絶する意思を形成・表明・実現することが困難である」という要件は、現在の暴行・脅迫という要件と大差はないのではないのか、十分な児童の保護に繋がるのか、といった疑問があると主張しました。

 

また、内閣府平成23年の調査によると、異性から無理やり性交された被害にあった時期として、中学生から19歳の時期は全体の四分の一を占めています。加えて、法務省の令和2年3月の調査によると、平成30年4月1日から平成31年3月31日の期間に第一審で有罪判決が言い渡された172件のうち、18歳未満の児童が被害者であった事件は全体の61.6%、13歳以上18歳未満は51.1%を占めています。これらは決して少なくない割合です。

 

これらを踏まえて先ほどの条文案について考えると、C案が採用され177条・178条の改正だけに留まった場合、児童の保護は本当に十分と言えるのか、不安が残ると中山は主張しました。

 

177条暴行・脅迫要件、178条心神喪失・抗拒不能要件の改正案について

また、第一回目で説明のあった177条、178条の改正案について、再度説明しました。

 

現在、改正案として、以下の2つの案が挙げられています。

 

表2

 

A-1案

A-2案

個別事由

次の事由により、

次の事由その他の事由により、

包括要件

その他意思に反して、           

拒絶する意思を形成・表明・実現することが困難であることに乗じて、

 

性交等をした者は、強制性交等の罪とし、

5年以上の有期懲役に処するものとする。

 

個別事由=包括要件

個別事由≧包括要件

 

A-1案は、個別事由と包括要件がイコールの関係になっており、「その他意思に反する」という要件を正面から規定するものです。一方、A-2案は、個別事由に加え、「拒絶する意思を形成・表明・実現することが困難であること」を充足してはじめて強制性交等罪になるものです。

 

個別事由の例としては、以下の8つが挙げられています。

 

 ①暴行・脅迫 ②心身の障害 ③睡眠、アルコール・薬物の影響

 ④不意打ち ⑤継続的な虐待 ⑥恐怖・驚愕・困惑 ⑦重大な不利益の憂慮

 ⑧偽計・欺瞞による誤信

 

中山は、13歳未満を対象とする現行法の維持や14歳未満への改正に留まった場合、これらの事由だけで十分に児童が保護されるかは分からないと言います。児童が徐々に被害に取り込まれていくなかで必ずしも暴行などが伴うわけではなく、また、児童が被害を自覚していないこともあり得るからです。

 

また、中山は、長期的な展望をもって児童が性的同意を行うことは実際非常に難しいと強調しました。例えば、中学生が性行為によって感染症を罹患した場合、自分自身で病院に行ってお金を払い治療を受けることは相当難しいと考えられます。性行為にはこのような長期的な影響も付随するため、「ただ性的に触れ合うことだけの同意では足りず、性交同意年齢が13歳未満や14歳未満に留まることは非常に危ういことである」と中山は主張しました。

 

PARTⅡ 検討会・法制審議会の現状について

第二部では、検討会・法制審議会の現状について、中山と女性の権利プロジェクトチームメンバー・司会の後藤弘子教授が、質疑応答と簡単なディスカッションを行いました。

 

法制審議会での子どもの捉え方

はじめに、法制審議会における子どもという存在の捉え方について話がありました。

 

中山は、法制審議会における子どもの捉え方について、子どもを大人と同じように合理的な判断ができると考えてしまっている問題があると指摘します。子どもからみた一歳差と大人からみた一歳差が大きく異なるといった事実からも、より現実に即した検討をするには自分自身が中学生だった時のことを考えるなど、より子ども自身の視点に立つことが必要であると言います。また、検討会や法制審議会では、過去の経験に関する大人へのヒアリングはあるものの、実際の子どもの声を届けられることがない現状もあります。

 

加えて、除外規定のところで説明したように、「中学生同士の自由な恋愛を処罰するのか・それらをどのように除外するのか」に論点が寄っている印象もあると示しました。中山と後藤は、「この論点についても議論が必要ですが、それだけではなくそもそもの児童の保護にもより注目する必要があるのでは」と主張します。

 

グルーミングや誘引行為について

また、グルーミング罪についてどのような位置づけで議論されているのか、後藤から質問がありました。法務省「性犯罪に関する刑事法検討会」の報告書によると、グルーミングとは、「手なずけの意味であり、具体的には、子供に接近し て信頼を得て、その罪悪感や羞恥心を利用するなどして関係性をコントロールする行為」を意味します。

 

中山によると、グルーミング罪に関するたたき台は次回の法制審議会で出るとのことですが、現状はオンラインを利用したグルーミングが主眼になっていると言います。性交同意年齢に関する議論のなかでは、「子どもの方から誘うことだってある」という意見も出ており、これに対して中山は「一見同意に見えても、行為や同意の本質がしっかりと共有されていないなら同意ではない」と指摘します。

 

また、誘うという行為の捉え方について、後藤も出会い系サイト規制法を例にあげて説明しました。20年ほど前から、出会い系サイト規制法では、児童が誘引行為をした場合も犯罪とみなされ、大人と同じ刑事処分は受けないが、家庭裁判所に送致されるという仕組みになっています。このことからも、「誘う」という行為に関して同意の非対称性があること、すなわち一見同意しているように見えても十分な同意ではない可能性があり、誘う側に非があるとは限らないということが、なかなか理解されていない現状が伺えます。中山も、自分も好きなのではないかと児童に思いこませることで、性行為の時点で暴行・脅迫がなくとも騙して性行為がされる可能性があると主張します。法制審議会においても、グルーミングの悪質さについて、またその実際のプロセスについて、まだ理解が十分でないと考えられます。

 

条文案への姿勢について

また、後藤から「条文のA案について、法制審議会ではどのような印象がもたれているのか」質問しました。中山によると、A案はおよそ除外規定がないため、やはり中学生同士の場合はどうするのかといった意見が出てきており、A案に対して肯定的であるのは少数であるようです。

 

加えて、「現状C案が採用されそうなのか」という質問が参加者からありました。

中山によると、刑事責任能力と性的同意年齢を同列にする必要はないこと、海外でもそのようにはなっていないことは法制審議会でも確認されているとのことです。しかし、C案なのか、せめてB案なのかといったところは、次の第6回の議事録を参照したいとのことです。後藤も、刑法違反で刑罰を科すか科さないかと、被害を受けた児童をどう保護するかは全く別の問題であり、同じように考えることには合理性がないと主張しました。

 

参加者からの質問

続いて、参加者からの個別の質問への応答が行われました。

 

Q.

児童福祉法の領域に任せるという意見についてどのように考えるか。

 

A.

中山:児童福祉法に任せることで、十分なのかという問題だと思います。そもそも法定刑が違い、児童福祉法で処罰される行為はかなり絞られています。それは直接・間接問わず児童に事実上の影響力を及ぼし淫行を成すことを助長・促進される行為だと定められていて、グルーミングのような場面はこれに当たらないとされ、児童福祉法で処罰できない可能性が高いです。そのため、児童福祉法に任せるだけでは十分とは言えないと考えられます。

 

後藤:処罰に加えて、実際はネグレクトのような被害がないと、児童福祉法でも介入が難しい状況にあります。被害を刑罰として考えるのか、児童福祉法に任せるのかが論点になっていると思いますが、やはり性行為を被害とせず自己決定の結果だと認識する傾向が未だ強くあり、大きな問題だと考えています。

 

Q.

B-1案とB-2案にはどのような違いがあるのか。

 

A.

中山:除外規定を本文に書くのか、かっこ書きにするのかという違いだと思うのですが、まだ議事録が出ていないため完全には分かりません。

 

後藤:ここは立法技術の問題で、条文を考える際、他の刑法の条文とのバランスをよく考えます。現状の感触としては、規定の内容というより、このような立法技術の意味合いが強いと認識しています。どちらがより分かりやすいか、バランスが良いか、という問題です。

 

中山:私も、立法技術の問題であり、実質的な内容の違いではないように認識しています。

 

Q.

 性交同意年齢を16歳に引き上げるA案の採用が現状厳しいとのことだが、海外では17歳などさらに引き上げるような流れもある。なぜ日本では、ここまで性交同意年齢引き上げへの抵抗が強いと思うか。

 

A.

中山:中学生以上の子達が自分から性的接触を求める能力があると思われていることが問題だと思います。もちろん、中学生が興味・関心を抱いていて何も強制がない中で適切に関係を築くことはありますが、大人と子どもといった圧倒的不均衡な関係性のなかでそれを純粋な恋愛と捉えるのは不適当であると考えます。

 

よく当事者の方からも恋愛の話はしていません、という声が出ますが、対等な恋愛についての話ではなく対等性がないところで性的接触を深めることの話であるということです。このような性的接触が将来の長期的な心身への影響を及ぼし将来働くことも外に出ることも難しくなることがある、ということを踏まえると、中学生の性的関心の結果だから問題ない、という結論では済みません。また、中学生がこのような長期的な不利益を理解して力関係のある人間との性行為を拒否することの難しさを、もっと理解する必要があると思います。

 

後藤:やはり、性犯罪被害者の実態が理解されていないことが原因だと思います。権力性・対等でない関係性がここでは問題だと思いますが、どうしても中学生同士のことに論点が集まってしまっている現状があります。性犯罪被害の実態を踏まえると、少なくともB案が本来あるべき流れだと思っています。

 

また、仮に中学生同士の適切な恋愛があると認めるならば、小学校から性教育をきちんと行い性的主体として子どもを育てることも同時に行わなければならないと思います。現在、命の安全教育が一部で試験的に行われていますが、全ての学校で強制的に行う必要があると思います。

 

Q.

 現在、刑法以外の部分でも子どもの保護に関する動きが色々あるが、刑法改正への影響があまりないように思われる。このことについて法制審議会の議事録などを踏まえて、どう思うか。(後藤より)

 

A.

中山:法制審議会においては、他の法改正などの動きはあまり言及されておらず、引き上げと除外規定の根拠に関する抽象的な議論が主であると感じます。もちろん法改正において論理性をもたせることは大事ですが、実態から離れて論理を立てても、実際に社会の人々のためにはなりません。したがって、現状の問題を踏まえて法的にどう対応するか、その過程でどう論理性をもたせるかが大事だと考えます。

 

後藤:そのために被害者の方なども議論に入っているのですが、やはりそこの考え方がなかなか浸透していないように思われますよね。

 

Q.

仮にA案を採用する場合、中学生同士がお互いに真摯に求める場合であっても該当してしまうという話があるが、その点についてどう考えるか。

 

A.

中山:子どもの権利委員会で実際に児童相談所で関わっている方のお話を聴いていると、性交同意年齢が13歳である現行法の下であっても、小学生同士の性的接触は既に起こっているそうです。今回の引き上げで新たに問題として生じているわけではありません。そして、実際に問題があるとして保護者が警察のところに行った際は、それぞれの話を聴いて適切な恋愛関係にあると分かったらその場で適切に指導する、ということが今でも行われています。

 

そのため、子どもの権利委員会で被害児童の側で活動されている先生からは、全ての場合で児童相談所が介入し、家庭裁判所に送るということは今も行われていないため、A案を採用した場合も、現場の運用に関しては問題ないという意見です。この話は実際に議事でも挙がっているが、やはり論理的に全部当てはめて良いのかがネックになっているようです。

 

後藤:例えば、15歳同士のケースで事件として扱われることになっても、少年事件なので家庭裁判所に送致されます。逮捕され身柄を拘束されることはないです。そうすると、一定の手続きは進むが、将来に決定的な影響があるわけではないですし、実際家庭裁判所に送致されている少年少女は皆さんが思うより多くいます。むしろ自分の行為を見直す機会であり、教育のような意味があります。これを踏まえて、やはり実態を把握し被害者をどのようにサポートしていくのかではなく、論理的な部分だけが注目されているのは悲しく思います。

 

Q.

16歳未満の者が16歳未満へグルーミングを行った場合についてどう考えるか。また、年齢が下の者から上の者へのグルーミング罪についてもどう考えるか。

 

A.

後藤:グルーミング罪は加害者が成人であることを前提として議論されています。なので、加害者が18歳未満であれば、少なくとも法制審議会で議論されているグルーミング罪には該当しないということになると思います。

 

中山:年齢が下の者から上の者へのケースについては、法制審議会では特に考えられていないと思います。

 

後藤:グルーミングとは手なずけることであり、基本的に圧倒的な権力をもつ者がそれを利用して行うことであるので、権力の弱い者がより強い者を手なずけるというのは、グルーミングの定義には当たらないと思います。例えば、女性の側から誘う場合もそうですが、誘うというのは類型的に脆弱な立場の人が行うことでもあるので、そこを問題にするのは刑法としてはあってはいけないように思います。グルーミングというのは、あくまでも成人が未成年者に対して行うこととして、法制審議会では議論されていると思います。

 

終わりに

閉会の挨拶

本ウェビナーの最後には、登壇者の中山と後藤から閉会の挨拶が述べられました。

 

中山からは、今回の刑法改正にかける思いが語られました。中山は、仮に今回の改正が14歳未満までに留まり177条の改正だけになるならば、全国でたくさんの方が被害について声をあげて頑張ってきた意味がなく、半歩程度しか進まなかったことになると話しました。また、被害の実態を適切に捉えてきちんと子どもを救っていける刑法になってほしい、そのために皆で声をあげて法制審議会にアピールしていくことが必要であると強調しました。

 

後藤からも、被害者の実態に応じた刑法改正の必要性が訴えられました。また、このように2回にわたるウェビナーを開催した理由として、刑法改正に社会の注目があまり集まっていない現状があったことを示し、ウェビナーを通して少しでも皆様に問題提起ができれば幸いだと話しました。

 

参加者からの質問を受けて、性暴力に関連した女性の権利プロジェクトチームの取り組みについても説明しました。後藤からは、デジタル性暴力に関する提言書を既に出しており、各国の現状をまとめたデジタル性暴力についての報告書も現在準備していること、AV出演強要問題についても2017年3月に報告書が出ていること、またHRN副理事長の伊藤和子を中心に現在進行形でロビイング活動を行っていることなどの説明がありました。

 

今後のイベントについては未定ですが、引き続き精力的に活動を続けていく意志表明とともにウェビナーが締めくくられました。

 

最後に

本イベントにご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。

私たちヒューマンライツ・ナウは、引き続き女性の権利に関するイベントの開催、調査報告や政策提言を続けてまいります。ぜひこれからもご支援、ご協力のほどよろしくお願いいたします。




(文・大谷理化)

 

*1:前回のウェビナーの報告ブログは、こちらからご覧ください。

【イベント報告】4月9日(土)ウェビナー「~これでいいのか法制審~刑法性犯罪規定改正の現状を問う」第1回目:刑法177条と178条

ヒューマンライツ・ナウ(HRN)は2022年4月9日(土)にウェビナー「〜これでいいのか法制審〜刑法性犯罪規定改正の現状を問う 第1回目:刑法177条と178条」を開催いたしました。

本イベントでは、HRN女性の権利プロジェクトチームの中山純子弁護士が、性犯罪刑事法検討会で被害の実態に即した刑法改正がなされるかについて、緊急に問題提起をしました。

 

PART I 中山純子 「刑法性犯罪規定改正の現状を問う①」

まず、法制審議会の概要が紹介されました。詳しくは、3/9のイベントブログ法務省のHPをご覧ください。法制審議会では、諮問第117号について議論がなされています。

第1〜5回の会議で全10個の論点について1巡目の議論が終わり、3月29日の第6回会議でこれからの議論のたたき台が示されました。

 

本イベントでは、今回の法制審議会で検討された論点のうち、以下の二つの論点の条文案について解説しました。

論点1:刑法177条暴行・脅迫要件、178条心身喪失・抗拒不能要件の改正

論点3:地位関係性利用等罪の新設

 

論点1について

条文案

刑法177条暴行・脅迫要件、178条心身喪失・抗拒不能要件の改正の条文案としてA-1案、A-2案、B案がたたき台として示されています。ここではA-1案、A-2案について説明しました。

 

表1

 

A-1案

A-2案

個別事由

次の事由により

次の事由その他の事由により

包括要件

その他意思に反して、性交等をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処するものとする。

拒絶する意思を形成・表明・実現することが 困難であることに乗じて、

性交等をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処するものとする。

 

個別事由=包括要件

個別事由≧包括要件

 

個別事由として挙げられた例は以下の通りです。

① 暴行・脅迫

② 心身の障害

③ 睡眠、アルコール・薬物の影響

④ 不意打ち 

⑤ 継続的な虐待

⑥ 恐怖・驚愕・困惑

⑦ 重大な不利益の憂慮 

⑧ 偽計・欺罔による誤信

 

A-1案とA-2案の違いは、A-1案は個別事由と包括要件が並列である(個別事由=包括要件)一方、A-2案は個別自由に該当したとしても包括要件に当てはまらない限り性交等罪にならない(個別事由≧包括要件)という構造になっていることです。つまり、A-2案では、包括要件で個別要件に縛りをかけているように見えると中山はいいます。

 

  • 現行の刑法との比較

刑法177条前段

13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する

 

暴行の程度について条文に明記されてはいませんが、最高裁昭和24年5月10日判決により、「相手方の抗拒を著しく困難ならしめる程度のもの」であるとされています。

 

これは、以下のように4段階に暴行の種類が分けられているなかで、一番狭義のものが強制性交等罪に相当するとされています

 

表2

人又は物に対する不法な有形力の行使

 

人の身体に対する直接的又は間接的な不法な有形力の行使

 

人の身体に対する直接的な不法な有形力の行使

人の身体に対し、かつ、その反抗を抑圧するに足りる程度の不法な有形力の行使

以上のことから、刑法改正によって現在の刑法の概念からどれほど変わるのだろうかということに、中山は疑問を呈しました。

 

事例説明

 

現在の刑法で無罪になった事例について、刑法改正後はどのような扱いになるのかについて中山は解説しました。

(※具体的な事例の描写を含むのでご注意ください。)

 

事例1 広島高判 昭和53年11月20日(無罪)

A:180cm男性  V:152cm女性(38歳)

関係性:知人

時間:夜間

場所:人気のない場所の車内

概要:

  • AがVを車内で口説く Vは帰りたいと表明
  • AがVの肩に手をかけて引き寄せ、運転席台に倒して覆い被さり、乳房を吸う
  • Vは、泣き出し「やめてくれ」
  • Aは、Vのスラックス、下着を下ろして①性交

判断

  • 不同意は認められた。
    • Vは抵抗しようとはしなかったものの、困惑しながらある程度拒みがたい状況下においてなされたということが認められたため。

  • しかし、抵抗が著しく困難な暴行とはいえないため無罪
    • 有形力の行使は、合意性交でも伴う。AはVが苦しいと言うと少し休憩を取り、ドアに頭がつかえて痛いと言うと体をずらしてやり、平穏に性交しようとしているかの発言もあったため。

 

事例2 大阪地判 平成20年6月27日(無罪)

A:男性(24歳)  V:女性(14歳) 

関係性:前日初対面

時間:夜9時ころ

場所:神社横路上の車内

概要:

  • 午後8時ころに待ち合わせをしてドライブし付き合うことに承諾。車内でキスをした。これは被害者もいやではなかったといっている
  • Aが胸をもむと、Vは「今日はやめとかへん」「早過ぎひん。」と言いAの肩を押した
  • Aは「いいんじゃない」等言ってやめず
  • A、Vの足を開いて下着に手を入れ陰部を触る 
  • V「今日はやめとかへん」
  • A「入れるまではせえへん」などと言い、続ける
  • V、Aの肩・腕・手を抑えたり、足を閉じたりした
  • A、Vが足を閉じているにもかかわらず、Vのズボンとパンツを脱がせ、再び足を開かせ覆い被さって性交

判断 

  • 不同意は認められた
    • Vがやめておこうという趣旨の発言をしているため
  • 足を開かせる行為・覆い被さる行為は反抗を著しく困難にする暴行ではない
  • Aに故意はなかったとした
    •  Vは、拒否の態度を示しつつも、最終的には大きな抵抗もないことから、AはVが消極的ながら性交を受け入れていたと誤信した疑いもあるから

 

事例3 東京高判 平成26年9月19日(破棄無罪)

A:男性(25歳)  V:女性(15歳) 

関係性:初対面 事件前AはVに酒を飲ませていた

時間:夜8時30分ころ

場所:小学校の校庭

概要:

  • Aは、Vをコンクリートブロックに押し付けて胸を直接触
  • 背中を押して上半身を少し曲げる体勢にし、ズボンとパンツを足首辺りまで下ろし背後から性交
  • Vは「やめて」と言い、自分のズボンを押さえ、Aの手をつかんだりしていた 

判断

  • Vは、任意に性交に応じたのではない(なされるがままに性交に至った)ことは認められた
  • AがVに行なったことは、時間、場所、年齢、体格、飲酒の影響等を考慮しても、抵抗を著しく困難にする程度ではないとした
    • 肩を押してブロックに押し付けた以外は、通常の性交に伴うような行為にとどまり、抵抗を排除するような暴行脅迫はなく、体勢からするとVが足をばたつかせるなどしさえすれば、性交を容易に防ぐことができただろうから
  • Aには故意がなかったとした
    • 性交の際、Aが強い暴行脅迫を加えていないのに、強い抵抗を示していないのだから、その対応ぶりから、合意したと考えて行為に及んだ可能性も否定できないから

 

中山は、検討会でも法制審議会でも繰り返し確認されている以下の2点を共有しました。

①性犯罪の処罰規定の本質は被害者が同意していないにもかかわらず性的行為を行うことにある

②包括要件は被害者に抵抗を要求するのは明らかに不適切であるので、そのような文言にならないようにしなければならない

 

続いて、「性的同意とは何か」について解説しました。

性的同意の成立には以下の4つが必要だと確認されているといいます。

①強制力がないこと

②能力や年齢差などによる非対等な関係性がないこと

③意識不明や混乱によって判断能力が弱まっている、あるいは、失われている状態ではないこと

④一つの行為への同意は、他の行為への同意を意味しない

 

そして、性暴力は決してセックスの延長線上にあるものではないことを理解する必要があると中山氏は強調しました。

性暴力とセックスを分けるものは同意の有無であり、二つは決して交わらない平行線上にあるということを理解しなければならないと主張しました。

 

以上の前提を認識しつつ、現状のたたき台を見ると、A-2案では「拒絶する意思を形成・表明・実現することが困難であることに乗じて」を暴行のプラスアルファの要件に加えることになっているが、それは被害者が同意していないにもかかわらず行われる性的行為を処罰することができる構成要件になっていないではないかと強く懸念を示しました。

 

論点3について

地位関係性利用等罪(親族、後見人、教師、指導者、雇用者、上司、施設職員

等、被害者に対する権力関係にある者がその地位を利用して性暴力を行う事案)*1のたたき台としては、以下の2点が想定されているといいます。

1. 一定の年齢未満のものや障害を有するものが被害者の場合

2. 1以外の場合が被害者の場合

 

一定の年齢未満のものや障害を有するものが被害者の場合の条文案

まず、一定の年齢未満のものや障害を有するものが被害者の場合の条文案3つ( A-1案、A-2案、B案)について説明しました。

 

表3

 

A-1案 

A-2案 

B案

一定の年齢未満のものに対して

18歳未満の者に対し、一定の地位・関係性を有する

〔例えば教師、ス ポーツの指導者、祖父母、おじ・おば、兄弟姉妹等〕であることによる影響力があることに乗じて

性交等をした者は、5年以上の有期懲役に処するも のとする。

18歳未満の者に対し、一定の地位・関係性を有する者が、これを利用して重大な不利益の憂慮をさせることにより、

拒絶する意思を形成・表明・実現することが困難であることに乗じて、

性交等をしたときは、5年以上の有期懲役に処するものとする。





一定の地位・関係性を有する者〔例えば学校の教師、スポーツの指導者、障害者施設の職員等〕が、


教育・保護等をしている者に対し、地位・関係性を利用して性交等をしたときは、●●●に処するものとする。



障害を有するものに対して

心身の障害を有する者に対し、一定の地位・関係性を有する者〔例えば障害者施設職員等〕であることによる影響力があることに乗じて、

性交等をした者は、5年以上の有期懲役に処するものとする。

心身の障害を有する者に対し、一定の地位・関係性を有する者が、障害により拒絶する意思を形成・表明・実現することが困難であることに乗じて、 

性交等をしたときは、5年以上の有期懲役に処するものとする。 

 

  • 現行の刑法との比較

刑法第179条第2項 監護者性交等罪

18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第177条の例による

 

 中山は、まず一定年齢未満のものに関して、A-1案は現在の監護者性交等罪と同じ構成になっており、現行法の要件の拡張であるとしました。教師、スポーツの指導者、祖父母、おじ・おば、兄弟姉妹など、被害者に対する権力をもつ者(地位関係性にあるもの)が性交等をしたら、同意は関係なく処罰するということです。

 一方、A-2案は、A-1案とは全く違う構成になっていると主張します。A-2案では地位関係性にあるだけでなく、加えて“これを利用して重大な不利益の憂慮をさせ”て性交等をする場合のみ処罰するということです。

 

 同じく、障害を有するものに対しても、A-1案とA-2案では構成が違います。A-1案は現在の監護者性交等罪と同じ構成になっており、現行法の要件の拡張であるとしました。障害者施設職員など被害者に対して権力を持つもの(地位関係性にあるもの)が性交等をした場合、同意は関係なく処罰するということです。

 一方、A-2案では、地位関係性にあるだけでなく、加えて”拒絶する意思を形成・表明・実現することが困難であることに乗じ”て性交等をした場合のみ処罰するということです。

 障害を有するものに対する性交等について、議論の中で考慮されているのが、障害を持つ方々の性的な行為をする自由や決定権です。たとえばA-2案であれば、”一定の地位関係性を有するもの”とするときの”地位”を限定する必要があるという意見があります。また、A-2案であれば、”障害により拒絶する意思を形成・表明・実現することが困難であることに乗じて”という包括要件があるので、”一定の地位・関係性を有する者”というときの”地位”の限定は緩やかになるだろうと中山は言及しました。

 

 さらに、177条・178条のA-2案と地位関係性利用等罪のA-2案とを比較する(下の表)と、異なる点は、地位関係性利用等罪には”18才未満の者に対して”と年齢の条件があるという点です。中山は、177条・178条A-2案に地位関係性利用等罪のA-2案が内包されてしまうので、後者が必要でないと結論付けられることに対して懸念を示しました。

 

表4

177・178条のA-2案

次の事由その他の事由により、拒絶する意思を形成・表明・実現することが 困難であることに乗じて性交等をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処するものとする。

【例示列挙の例:重大な不利益の憂慮

地位関係性利用等罪のA-2案

18歳未満の者に対し、一定の地位・関係性を有する者が、これを利用して重大な不利益の憂慮をさせることにより、拒絶する意思を形成・表明・実現することが困難であることに乗じて性交等をしたときは、5年以上の有期懲役に処するものとする

 

  • B案

一定の地位・関係性を有する者〔例えば学校の教師、スポーツの指導者、障害者施設の職員等〕が、教育・保護等をしている者に対し、地位・関係性を利用して性交等をしたときは、●●●に処するものとする。

 そのほかに、B案として、A案とは全く異なる案が出されています。この案では、職権濫用して性交等をした=地位の濫用と捉えて、被害者が同意していても、教師など(一定の地位関係性があるもの)が、生徒など(保護しているもの)に対して性的行為等を行なった場合は処罰されます。”●●●に処するものとする。”として法定刑が示されていないため、法定刑をA案にあるような5年以上の有期懲役という刑罰から下げる議論が予想できるといいます。

 

1(一定の年齢未満のものや障害を有するもの)以外のものが被害者の場合の条文案

”一定の年齢未満のものや障害を有するもの”以外のものが被害者である場合についても1の条文案と同じ構造で、A案とB案が出されています。条文案は以下の通りです。この場合も1(一定の年齢未満のものや障害を有するもの)と同じように(1の場合は表4を参照)、A案は177条・178条A-2案に含まれてしまうため、地位関係性利用等罪の新設が必要ないという議論につながるのではないかと中山は懸念を示しました。

 

表5

A案

B案

一定の地位・関係性を有する者が、

これを利用して重大な不利益の憂慮をさせることにより、拒絶する意思を形成・表明・実現することが困難であることに乗じて、

性交等をしたときは、5年以上の有期懲役に処するものとする。

一定の地位・関係性を有する者〔例えば職場の上司等〕が、特定の相手方〔例えば部下等〕に対し、

地位・関係性を利用して性交等をしたときは、

●●●に 処するものとする

 

事例説明

続いて、現在の刑法で無罪になった事例について中山は解説しました。

(※具体的な事例の描写を含むのでご注意ください。)

 

事例 福岡高宮崎支判 平成26年12月11日 無罪 (最決平成28年1月14日上告棄却)

A:少年ゴルフ教室主催の指導者(56歳) V:生徒(18歳)

関係性:Vが中学3年生の時から、生徒と指導者

時間:午後2時30分ころ

場所:ラブホテルの部屋内

概要:

  • 高校生の頃からはほぼ毎日指導を受ける Vはプロゴルファーが目標
  • A、Vに「こういうところに来たことあるか」「こういう所で性行為の体験をしたことはないんじゃないか」「お前はメンタルが弱いから」「俺とエッチをしたらお前のゴルフは変わる」
  • V、身体を後ろに引くようにして「いやあ」「いやいや」という
  • A、Vをベッドに連れていき、押し倒して寝かせ、その上に乗る
  • Aがキスしようとしたら、Vは顔を横に向け口をつぐんで拒絶
  • A、Vの顔を両手で挟んで強引に元に戻し、キスをして舌を入れた
  • A、Vの胸を触り、着衣を脱がせ、性器を触り、横に寝て自らの性器を触らせ、再びVの上に乗って性交

判断 

  • 不承不承(ふしょうぶしょう)であれ性交に応じてもよいという心情にあったことをうかがわせる事情はないので不同意であることを裁判所は認定した
  • 抵抗したりすることが著しく困難であったことは明らかであるので抗拒不能状態であったことを認められたが、故意の否定により、判決は無罪であった
    • あくまでの被害者の(少なくとも消極的な)同意を取り付けつつ、性交に持ち込もうとしていた可能性が否定できないから
    • 被告人は心理学上の専門的知見は何ら有しておらず、かえって女性の心理や性犯罪被害者を含むいわゆる弱者の心情を理解する能力や共感性に乏しく、むしろ無神経の部類に入ると認定された
    • Vから具体的な拒絶の意思表明がなく異常な挙動もない状況で、抵抗できない状態になっているため抵抗することができない事態に陥っていると認識していたと認めるには合理的疑いが残るとして、Aの故意が否定された

 

このような事例に対して中山は一体消極的な同意とは何なのか、そして、非対等な地位にかこつける者や、性的同意に無関心・無理解な者を罪に問えていない現状を強く非難しました。

PART II 質疑応答

イベントの後半には、中山氏と司会の後藤弘子氏による質疑応答が行われました。参加者の方々から興味深いご質問をお寄せいただき、議論も大変意義のあるものとなりました。

 

はじめに現在の法制審議会のなかで作成された「たたき台」が被害者の実態に沿っていないのではということへの問題提起として今回のウェビナーを開催したと後藤はいいました。

 

Q.

A-2案は拒絶困難な程度に達しない場合が不安なのだろうか?

A.

現行法とは違うということを示そうとしているはずだが、どうしてこの文言が使われるかわからないです。

 

Q.

なぜ被害者がいやだというだけで犯罪成立に持っていけないのか。捜査段階で2人の関係、物証、日時を確認すればいいのではないか?

A.

後藤:私たちも被害者の訴えがあれば罰されるべきであると思います。それを前提として、日時の確定は実務では大変困難です。

中山:そもそも日時を確定しなければならないということが被害者の実態に即していないと考えます。被害は繰り返し行われるものでもあり、人の記憶で最も曖昧なものは日時であるということもあります。ましてや性的行為などトラウマティックなものは忘れていこうとするという記憶の構造やトラウマの理解が適切になされていないと思います。

 

Q.

被害に遭うときは呆然として体が固まってしまうのになぜ抵抗が必要とされるのでしょうか?その被害の実情をわかっていただけないのでしょうか?

A.

中山:法制審議会のなかにもメンバーとして精神科医の方や当事者の支援グループのかたが参加していて、被害に遭うときは呆然として体が固まってしまうということは議論の中で徐々に理解はされています。(3/9のイベントブログを参照)しかし、条文にそれが落とし込まれて一般に周知されないと意味がないです。

後藤:今回の改正については構成要件を明確にし、

  • 加害者へのメッセージになる
  • 裁判官の判断がブレないようにする

という二つを目的にHRNも声を挙げていますが、この質問のようなことが残る可能性はあるとおもいます。

 

Q.

地位関係性について、A-2案にすれば漏れはないのでしょうか?

A.

中山:監護者性交等罪は監護者と被監護者の間に同意は到底認められないという趣旨であるので、監護者性交等罪を拡張するA-2案では、性交等に同意があるか否かは問題になっていかないはずです。

後藤:一定の地位関係性を有しないと判断されると漏れる可能性はあると考えます。しかし、少なくとも大人であれば権力関係があり、そこに教師などの権力があれば地位関係性を有しないとはならないと思います。むしろ、たとえば担任である教師とそうでない教師で影響力に差があるというようにみなされるなど、”地位関係性に乗じた影響力がある”とみなされない場合を懸念しています。

中山:法制審では関係性に濃淡があるので、「地位関係性があれば有罪」とするのは問題だと議論されています。そこでA-2で構成要件を厳しくした案が示されていると思われます。

後藤:私は関係性に濃淡があっても、一定のポジションについていれば薄い関係性であっても圧倒的な力関係であると理解したほうがいいのではないと考えます。量刑で関係性の濃淡について考慮すればいいのではないでしょうか。現在の法制審議会での議論のように、構成要件で濃淡に言及する意味はあるのでしょうか?

中山:障害を持っている方が積極的に働きかけて性的関係に至る場合でも施設職員が罰されるので、障害を有する方の意思を国家が制限することがあってはならないという発想だと思われます。

後藤:なるほど。障害のある方々に関してはそうですが、18歳未満に関しては、教員による児童生徒性暴力防止法*2が4月から施行されました。濃淡にかかわらず教師の生徒に対する性暴力は懲戒事由になることが他の法律で明確に決められてるのだから、そちらと一貫性を持たせる必要があるのではないかと考えます。

 

Q.

セクハラ罪について説明がなかったが、法制審議会ではどのようなことを考えているのか?類型的脆弱性があるという理解がされていないと思われます。また、利益に誘導するのと不利益の憂慮は表裏一体なのだから、このA案の条文は実態から外れているとも言えると思います。

A

後藤:B案であれば関係性自体を利用しているとして広い処罰の策定になるように思えます。

中山:B案は画期的だと思います。法定刑を下げるのは疑問があるが、それでも画期的です。類型的脆弱性がないということがいわれているのでBが最後まで残るのか気になる。

後藤:類型的脆弱性が理解されないのはなぜか理解に苦しみます。権力、パワーとコントロールを持っているひとたちがどれだけ影響力と力を持っているかということを2014年から議論しているのにあまり理解されていない思います。

後藤:私たちが今回のイベントを開催したのは、私たちが求めていた法改正がなされないのではないかという強い懸念からです。 

AV出演強要問題やウクライナ問題によって注目度が薄れているのではと感じます。報道等を通じて皆さまに状況を知っていただきたいです。

中山:被害の実態に沿った法改正をするために、性的同意とは何なのかということに真摯に向き合って欲しいです。

終わりに

本イベントにご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。

法制審議会における刑法改正の議論については第2回目のイベントも4/16(土)に開催し、論点の一つである性交同意年齢について解説しました。そちらのブログも近々公開いたしますので、ぜひご一読ください。

HRNはこれからも被害の実態に即した刑法改正を目指して活動をしてまいります。ご支援の程、どうぞ宜しくお願いいたします。

 

(文:髙理柰)

 

【イベント報告】15周年記念イベント「危機を迎える世界。国境や世代を超えて何ができるのか」

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皆さまからの温かいご支援をいただき、この間、ヒューマンライツ・ナウは、国際人権基準を行動規範とし、国境を超えて世界、特に日本を含むアジアの最も深刻な人権侵害に取り組んで参りました。

これまでの活動で「女性の権利」や「ビジネスと人権」といった分野では一定の前進が見られる一方、今なお世界を見渡すと、根強くはびこる差別・分断の問題に加え、アジアでの権威主義の台頭、深刻化する気候変動問題、繰り返される武力紛争など深刻な人権侵害が広がっています。

そこでヒューマンライツ・ナウでは15周年を記念して、これまでの活動を振り返ると共に、国境や世代を超えて、みんなで人権が守られた平和な世界を実現するにはどうしたらよいかを考えるべく、イベントを開催しました!

第1部はヒューマンライツ・ナウ伊藤和子副理事より、ヒューマンライツ・ナウについて説明後、15年間の活動について話していただきました。

 

第1部 「6つのビジョンから見た15周年」

報告者:伊藤和子副理事

ヒューマンライツ・ナウとは


www.youtube.com

 

ヒューマンライツ・ナウは、日本を本拠とする日本で初めての国際人権NGOです。
世界人権宣言をはじめ国際的に確立された人権基準に基づいて、日本から国境を超えて人権侵害をなくすことを目標に活動をしてきました。

世界の人権団体やアジアの人権団体と関わりをもち、2012年は国連特別協議資格を取得して国連NGOになり、2021年にはニューヨークの事務所を法人化してきました。

できる限り最も深刻な人権侵害に駆けつけて、被害者の方に代わって声を上げること、得られた知識を元に国際社会や政府、企業に働きかけることで人権侵害をなくすため活動をしてきています。

■6つのビジョンから見た15周年

ヒューマンライツ・ナウにある6つのビジョンにおいて、この15年間どこまで活動が進んできたのか紹介しました。

戦争被害をなくす

ヒューマンライツ・ナウは戦争を最大の人権侵害として、これをなくしていくことを一つの優先に掲げてきました。戦争によって行われる人権侵害を調査することで、戦争犯罪の停止・処罰を求め、パレスチナイラクミャンマーウクライナ問題について取り組んでいます。また、さまざまな分野で核兵器禁止条約のキャンペーンに参加し、国際的なルールづくりにも関わってきました。しかし、現在発生しているウクライナ問題など、戦争がなかなか終わらない現状があります。

抑圧をなくす

団体の発足以来、アジア地域の人権活動家が抑圧される、民主主義がないという状況に対して働きかけを行ってきました。団体設立の翌年には、軍事独裁政権があったミャンマーで国境沿いにある政治犯の方々をサポートする団体に赴き、民主化をサポートする活動をスタートしています。

未来を育てる

未来を良いものにしたいと望むミャンマーの若者たちに対して、国際人権法や人権を教えるアカデミーを設立。特に少数民族の若者たちに、人権に関する活動を教えてきました。

2014年と2015年には民主化が進み、ミャンマー国内で人権意識醸成に関する活動を主導しました。しかし、ミャンマーでは民主化後も少数民族に対する軍の弾圧が続いていました。団体として、この弾圧に対して批判をしてきましたが、2021年のクーデターによって民主主義は危機的な状況にあります。これまで続いてきた活動は権威主義の揺り戻しに苦しんでいます。

搾取をなくす

グローバリゼーションのなかで、児童労働や強制労働などのビジネスによる搾取に苦しむ労働者がいます。団体としては、過酷な労働環境で製造された製品を私たちが使用している可能性があることに問題提起してきました。

ヒューマンライツ・ナウは、2013年に発生したラナプラザ事件の被害者を訪ねたことをきっかけに、自社だけではなくサプライチェーン上の人権侵害の問題も取り上げるようになりました。

2014年にはユニクロの中国の下請け工場での潜入調査を実施し、非常に深刻かつ過酷な労働環境があることを調査報告書にまとめました。他にもタイの食品産業や技能実習生の問題も含め、サプライチェーン上の人権侵害を調査、提言することで、企業、産業、社会に変化を生んできています。

紛争や抑圧と結びつくビジネス、気候変動を促進するビジネスに切り込んで、企業への働きかけを通じて世界や社会を変えていくことに注力しています。

差別をなくす

2014年に日本におけるヘイトスピーチの調査を実施し、解消法の成立に向けてさまざまな団体と取り組んできました。

引き続き、ウィシュマ・サンダマリさんの入管問題、Black Lives Matterやアメリカのアジアンヘイトなど、この分野での活動をより広げていく必要性を訴えていきます。

暴力をなくす

特に女性に対する暴力をなくす活動をしており、2016年にアダルトビデオの出演強要問題に関して、隠されていた人権侵害を明らかにする調査報告書を公表しています。

公表後、被害者の人たちが声を上げたことでこの問題は顕在化され、政府が対策に乗り出すことになりました。この瞬間も実効的な法改正を実現するためにキャンペーンを実施しています。

また、伊藤詩織さんと共に東京やニューヨークでイベントを行い、他の支援団体の皆さまと共に性犯罪規制の改正を求めるオンライン署名を行ったところ、10万筆以上の署名が集まりました。

そして現在、刑法性犯罪規定の改正に関する法制審議会の議論が佳境を迎えています。
少しずつ性暴力被害に関して、前に進めてきたのではないかと話していただきました。

 

■未来をどう育てていくか

貧しい人を生産に組み込んで搾取することで成り立っていたグローバル経済が限界を向かえており、地球のどこかで感染が広がれば、世界の経済や消費が打撃を受けて持続可能ではないことは、人権団体だけでなく経済界にも明らかになっています。
持続可能な社会を目指さないと、私たちの未来は危ないことが明確になりました。

  • 権威主義の台頭
  • 戦争
  • コロナ・気候変動など・持続可能性の課題

こうした課題に取り組むために、以下のアクションを考えています。

  • 国際法に基づき、抑圧や人権侵害、戦争に抗し、人権が保障されるように声を上げる
  • 抑圧体制に声が上げられない人たちに代わって声を上げる
  • 若い世代、女性、声を上げにくい人たちに寄り添って声を上げやすい社会、その声が実現される社会を一緒に作る
  • ヒューマンライツ・ナウに課された課題をみんなで担っていく。若い世代につなげていく

第2部 「若者世代から見た、この世界の人権と平和」

コーデネーター:津田大介氏(ヒューマンライツ・ナウアドバイザー)
発言者:ウィリアム・リー氏、小野りりあん氏、元山仁士郎氏、森百合香氏、山本和奈氏(五十音順)、坂口くり果氏(ビデオメッセージ)

 

第2部では、「若者世代から見た、この世界の人権と平和」をテーマに、若者世代の活動に焦点をあて、彼・彼女らからの視点から意見を伺いました。

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ビデオメッセージ 坂口くりか氏(第7回世界子どもの日映像スピーチコンテスト最優秀賞

現在留学中の為、時差の関係でイベントに参加することが難しくビデオメッセージで挨拶させていただきます。私は、小学4年生の時に、所属するNPO子どもの権利条約を知ってから、条約を母子手帳に載せる活動を始めました。

 

子どもの権利条約母子手帳に載せることで、子どもが生まれる前に条約を知り、暴力を振るわなくなるのではないかと考えました。こうした親から教育を受ければ、子ども自身にも権利があることを知り、周りの人々に伝えていくことができると思います。

 

小学6年生の時には、世田谷区の区長に直接子どもの権利条約母子手帳に掲載することを頼み、2019年度の4月から掲載が実現しました! 現在はこの活動を全国に広げていくために、たくさんの方の協力を得ながら厚生労働省に提言活動を行っています。

 

現在は外国に留学をしており、子どもに対する価値観の違いや子どもの権利条約の認知度の違いを感じています。日本を対象に活動をしていますが、いずれは世界に母子手帳子どもの権利条約を広げ、そして、子どもの権利条約を知っていて、守ることが当たり前の世界を作りたいと思っています!

 

若者世代から見る海外と日本の違い

ディスカッション参加者:

小野りりあん:世界中の人々がどのように気候変動に立ち向かっているのかを学ぶ旅を始める。2021年に友人と共に、気候変動に関する4日間のハンガーストライキを起こす。

山本和奈氏:一般社団法人Voice Up Japanの代表理事。その他には、モビリティー業界のイノベーションやスタートアップ支援の事業を行っている。

ウィリアム・リー氏:Stand with HK@JPNに所属。2019年6月から香港のデモが発生した際、日本から香港のデモを応援する活動を行い、現在は香港に関する情報を発信している。

元山仁士郎氏:2019年2月に辺野古の米軍基地建設のための、埋め立ての賛否を問う県民投票を実施。渋谷で香港のデモや沖縄でBlack Lives Matterの集会等を行っていた。

森百合花氏:HRN主催第一回子どもの権利スピーチコンテスト受賞者。

ピエ・リアン・アウン氏:日本在住のミャンマー人サッカー選手。

 

社会を変える意識はどのようにして醸成され、アクションまでいたるのか?

山本:(山本氏は現在チリ在住)チリでは1900年代に独裁者政権があり、その時代に生きてきた年配の人々は独裁者政権から離れようとする意識が強いです。また、チリには非常に大きな格差があり、2019年の歴史上最大のデモがきっかけで格差や社会問題に人々が関心を持つようになったと言われています。

 

格差の背景には独裁者政権時代に構築された憲法が、あまり変わっていないことが挙げられ、国民投票により憲法改正がされることになったそうです。

格差が目に見えている状況から、人々がこのままじゃいけない、声を上げないと前に戻ってしまうといった意識、独裁者政権の名残があることから、若者も上の世代も、社会を変えないといけないという気持ちが強いことが表れています。



小野:市民運動に関して海外と日本の違いはそうした運動のノウハウが受け継がれているか否かがあると思います。そもそも日本で60〜70年代に発生した学生運動市民運動をしていた人々に話を聞くと、運動の戦略や知識があまりない状態で取り組みをしていたと伺いました。そのなかで、戦略を立てて広角的に人が参加しやすいように市民運動を作り、みんなで育てていくことで日本の市民運動がより大きな効果が得られるのではないかと期待しています。

 

気候変動に関してイギリスでは、実は若者よりも大人が中心になっています。人々に影響を与えるようなデモをすることで、注目せざるを得ない状況を作ることでメッセージを発信していますね。日本では、まだまだそうしたアクションはないかなと思います。日本で今行動しなければならない必要性を、いかに国民に啓発できるかが重要だと思いますし、楽しくアクションを起こせるような工夫も必要です。

 

また、ロンドンでは運動を起こす時のトレーニングがあることに感心しました。運動を起こす時、さまざまなプレイヤーが必要になり、プレイヤーになってみたいと思った人が「どうしたらその役になれるのか」をきちんとトレーニングできる人が準備されています。運動のノウハウを伝授する方法が用意されているので、持続させていくことができるのではないでしょうか。

 

元山:2014年に自身で同世代の学生と共に運動をし始めた頃、インターネットでどういう風にデモをするのかを私も調べましたね。香港・台湾のデモやアメリカのデモも参考にしていたが、運動の仕組みを組織だって学べる場所は確かに見かけないです。口頭・口述で運動のやり方を伝えて継続させても、先細りになってしまうところがあるのかなと思いますね。

 

また、イギリスと日本とでは、おかしいと思ったことをどうやって他の人と共に声を届けるのか、問題を共有したらいいのかに対する行動が違いますよね。

 

ウィリアム:香港の最近のデモは、主導者がいない状況で自分がやりたい方向や体制で活動していく体制が多いです。2014年にようやく民主化に向けた大きな動きがありましたが、早い段階で終わってしまいました。その理由として、主導者が市民の望まない方向に運動を持っていってしまったからです。

 

誰かに従うことで間違った方向に行ってしまうのであれば、自分自身で考えて、自分自身が正しいと思う行動を取ることを香港のみなさんが考えだしました。結果として、2019年のデモでは200万人を動員できました。また、2020年7月頃のデモもあくまで香港人の各個人が主体的になって行動に移していました。

 

今の日本の若者世代だけではなく、一般社会的に個人が主体的になにか活動を立ち上げる動きが少ないのが少し残念ですね。なので、香港の例を鑑みて、日本の皆さんにも民主主義をうまく活用して自身の投票権や、自分の社会や自治体にある問題に関わっていただきたいと思っています。


ピエ:日本は生まれた時から自由な国で、私たちは戦って民主主義を獲得しようとしています。日本は政府批判もできますし、自身が思っていることを発言することができる。私たちの国は政府に反対する人は全て捕まり、政府を支持する人は保護される状況にあります。日本は、自由で民主的な国ですよね。

 

「このままではいけない」 切迫感をどう共有していくか。

最後に第二部の発表者の皆さまから「このままではいけないという切迫感をどう共有していくのか、今後どのように活動していくのか」についてそれぞれ一言いただきました。

 

小野:気候変動などはいますぐに行動しないと手遅れになってしまう。その切迫感を伝えるために、共に勉強や実践を起こす場所を作りたいです。

 

ウィリアム:まだまだ届いていない人権問題を知ってもらえるように、日本のローカルな面でも繋がりを持っていくことが大切。また情報を伝えるには言語の壁もあるので、日本語がわかる外国人にも、日本人と関わりを深めてもらえるよう努力していきます。

 

山本:声を上げることはやはり難しいけど、大切なのは連帯を示すこと。声をあげることだけにフォーカスするのではなく、自分ができる小さなことや、貢献できることを示していくことも重要なのだと、より多くの人に伝えていきたいです。

 

森:若者がデモに対してどのようなイメージを持っているか考えると、まだまだ当事者意識を持つ人は少ない気がします。日本でデモと聞くと、感情的な部分が原動力となって起こっているように見受けられがち。しかし、デモの仕方やトレーニングなどのノウハウを取り入れ、より知的に、論理的にデモを起こすことができたら良いなと思います。

 

元山:どのような発信をしたら届くのか、どんな価値観を大事にしていかなければならないのかを一緒に考えていきたいですね。また、アクションを起こす若者を利用しようと考える大人たちの価値観をアップデートし、若者一人ひとりの声に耳を傾けて欲しいと思います。

 

第3部 「世界の人権と平和のために私たちは何をすべきか」

コーデネーター:津田大介

発言者:阿古智子氏、小川隆太郎氏、佐藤暁子氏、鈴木賢氏、高橋済氏、雪田樹理氏(五十音順)

 

ディスカッション参加者:

佐藤暁子氏:ビジネスと人権プロジェクトリーダー

阿古智子氏:中国プロジェクトリーダー

雪田樹理:女性の権利プロジェクトリーダー

鈴木賢ヒューマンライツ・ナウアドバイザー

高橋済氏:HRN事務局次長

小川隆太郎氏:HRN事務局長

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ウクライナ侵攻を受け、私たちはどのようにコミットしていくべきか

小川:国連のアドボカシーの観点から、ウクライナ侵攻を受けて国連の機能不全が提起されるようになったという声はよく聞きます。しかし、国連が機能不全になっているとしても国連に代わる機関はないので、人権はやはり国際人権基準に基づいた定義のもと保護されるべきです。その大切さを、いま一度世代を超えて伝えていかなければいけないと感じています。

 

高橋ウクライナに限らず、今まで世界中から難民として逃げてくる方がいままでもたくさんいます。今回ウクライナの人を助けること事態は良いことだと考えていますが、ミャンマーアフガニスタン、シリア、イエメンに対してはどのような態度を取ってきたでしょうか。そのことを、振り返るきっかけにしなければならないですよね。「難民の選別は、命の選別」だと思います。いままで難民の選別をして、それを無関心に容認してきたことが私たちの社会の問題だと思います。

 

ウクライナの人々が命の危機に瀕していることから、自治体でも受け入れなどに関する活動があることは肯定的に見ているが、それが他の国籍の人に対しても「助けるべきだ」という意識が醸成するきっかけにできれば良いですね。

 

鈴木ウクライナ侵攻を見てわかることは、民主主義が機能していない権威主義国家だからこそ起きてしまったと思います。しかし、翻って日本の状況を見てもあまり楽観視はできないです。日本も権力に忖度したり、長い物には巻かれたり、権力を批判すること自体を避ける傾向にありますよね。

 

また、日本人のデモに対するネガティブな考え方は、デモさせないようにしているという意味では、権威主義国家的な色合いが非常に強い国ではないでしょうか。さらには、投票権があるにも関わらず半数以上が棄権しています。このような状況は、日本自体が権威主義国家化している危険を感じます。改めて、日本の民主主義の健全化が急務だと言えます。

 

雪田ウクライナの問題に限らず、戦時・紛争下では、女性や子どもに対する性暴力が、平時よりもさらに深刻な形で行われていることは、これまでの経験上明らかなことです。日本でも紛争下の性暴力ということについて、正しい認識を持っていない部分もあり、私たちの歴史にも繋がることです。今回のウクライナでの混乱を教訓にするのと同時に、紛争下で性暴力の被害に合っている人に、短期の支援ではなく長期的な視点で、なにができるのか、考えていくのかを個人的に思っています。

 

阿古:中国プロジェクトとしての視点でお話しをしますが、複雑な要素が絡み合ったなかでウクライナの問題が生じているので、中国ははっきりした姿勢を示すことができずにいます。そのなかで、日本は政治と経済を切り離し、経済を重視する対応をとってきましたが、(日中の国交において)この情勢下でまだそんなことを言えますか?と言わざるを得ないですよね。

 

中国は、ウイグルなどの民族を迫害する動きもありますし、一国二制度といった国際的な約束を無視するような形で国家安全維持法を作りました。そうした脅威が目の前で起こっているからこそ、日本がどういう国でありたいのか、どういった姿勢で中国と向き合いたいのか示し、その中でアジアの戦略や立ち位置を考えて、国際社会と協調していくことが大事だと考えています。

 

佐藤ウクライナ侵攻によって、日本企業は、制裁的意味合いでロシアからの撤退の意思表示をしました。しかし、ミャンマーにおける日本企業の撤退はかなり時間がかかりましたし、撤退の意味合いもかなり違うと思います。日本の企業が、ある国の権威主義体制に加担している事例は、まだまだたくさんあります。

 

侵攻を受けて浮き彫りになったのは、企業として民主主義へどう貢献し、一緒に取り組んでいくのかという視点がまだまだ弱いのではないでしょうか。

一人ひとりのアクションが、企業というものを民主主義の中でしっかりと意義のある活動していくアクターを育てることになると思っています。

 

日本の人権状況は進んでいるのか

最後に第三部の発表者の皆さまから「日本の人権状況は進んでいるのか、後退しているのか」「今後の展望」についてそれぞれ一言いただきました。

 

佐藤:今まで人権NGOと企業は対立関係に見られていた。

しかし、ビジネスと人権のテーマでは、最近ではさまざまな企業から呼びかけをいただいていることから、企業との対話を通じて、さらにその先の脆弱な人々の人権の保護の実現を目指していきます。

 

阿古:人権は普遍的に捉えるべきで、入管の問題やヘイトスピーチ、歴史問題など、ダブルスタンダードにならないように自分たちの足元をしっかり固めた上で、海外の人々とも繋がり、人権意識の醸成をヒューマンライツ・ナウのプラットフォームを活用して行っていきたいです。

 

雪田:女性の権利の分野でいうと人権状況は、少しずつだが着実にプラスに動いてきています。刑法改正に取り組んでいますが、5年前と比較すると、今の社会はかなり耳を傾けてくれます。今後、人権団体としてどのように考えを発信して、社会を変えていくような活動をするのかが大事になると考えています。

 

鈴木:LGBTの権利についてはほとんど進んでいないが、唯一救いとなるのが若い人の関心が非常に高いことですね。同性婚については、若い世代は圧倒的に指示しています。若者にとっては、なぜ同性愛者の婚姻を否定するのか意味が分からないという人が多い。こうした問題は世代間の対立であって、“おじさん政治”が変わればすぐに解決します。しかし、若者は選挙に行かないので手放しに楽観的になれないところもあります。LGBTの人権問題については、成果が出る直前のところまできているのではないかと思って期待しています。ウクライナの問題を通じて、日本に逃げてきている人々の裁判にも良い影響を与えるのではないかと期待しています。

 

高橋:難民政策に関しては、日本の現状は0点。救いなのは、入管法廃案運動で若い方々が声を上げてくださったということと、ウクライナ問題から社会に広く影響が及んだ場合は、変化が見られると思うことが期待しています。また、収容についても現状の制度や運用は0点です。人権外交というからには、改善が必須でしょう。入管に関しても、人権の面から誇れるような運用と制度を持って、世界に示していくようになって欲しいです。


小川:国連から定期的に日本の人権状況について審査を受けているが、そこで出されている勧告はずっと変わっていないんですよね。そういう意味では、そこまで変わっているとは言えないかもしれません。一方で日本国内の人権運動を見てみると、分野にもよるが前進しているのではないでしょうか。進んでいる分野はさらに推し進め、進んでいない分野は、進んでいる分野とうまく連携して引っ張っていきたいです。ヒューマンライツ・ナウとしては、人権状況を見える化して社会に示していきたいです。

 

おわりに

支援者のみなさまのお陰で、ヒューマンライツ・ナウは設立から15周年を迎えることができました。改めてこの場をお借りして、お礼を申し上げます。

また15周年を機に、ヒューマンライツ・ナウは事務局体制を刷新し、より人権状況の改善や人権意識醸成に取り組んで参ります。新しくなったヒューマンライツ・ナウをぜひ応援してください!事務局体制の刷新を機に、新たなマンスリーサポーターを募集します! 目標は20名です!

ぜひこの機会に、ヒューマンライツ・ナウとの長期的なお付き合いをご検討いただければ嬉しいです。

 

▼詳細・申込:

hrn.or.jp

【イベント報告】2022年2月「ビジネスと人権アカデミー」

ヒューマンライツ・ナウ(HRN)は2022年2月に全4回にわたる連続研修「ビジネスと人権アカデミー」をオンラインにて開催しました。ご参加頂いた皆様ありがとうございました。

 

本イベントの概要

2011年に国連で「ビジネスと人権に関する指導原則」が採択されてから、企業も人権問題について取り組むべきであるという考えが国際的に広がり、2020年には日本でも国別行動計画(NAP)が策定され、投資家もESG投資という形で各企業の取組みを注視するようになりました。各企業がビジネスと人権に真剣に取り組む必要性がますます高まっているといえます。ビジネスと人権に取り組むにあたって各企業が検討するべきは、事業リスクではなく、「人権リスク」です。

 

そこで本セミナーでは、ビジネスに関わる現場の「人権リスク」に着目することを目的に、8つのトピックについて当該分野の第一線で活躍する講師の方々に、ビジネスと人権の国際人権基準や基本的な考え方、また現場で実際に起きている人権侵害の実態まで、最新の動向をもとにわかりやすく解説いただきました。

 

講師紹介

セミナーは次の8名の講師によって行われました。

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菅原 絵美氏(大阪経済法科大学国際学部教授)

佐藤 暁子氏(弁護士 / ヒューマンライツ・ナウ事務局次長)

小山 正樹氏(JAM労働相談アドバイザー / 在日ビルマ市民労働組合(FWUBC) 顧問)

木口 由香氏(メコン・ウォッチ事務局長 / 理事)

渡邉 彰悟氏(弁護士 / 在日ビルマ人難民申請弁護団代表)

田中 竜介氏(ILO駐日事務所 / プログラムオフィサー 渉外・労働基準専門官)

高橋 宗瑠氏(大阪女学院大学教授) 

阿古 智子氏(東京大学大学院総合文化研究科教授) 

 

各講座の概要は以下の通りです。

 

DAY1-1「国際人権法と企業:総論」

講師:菅原 絵美氏(大阪経済法科大学国際学部教授)

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菅原氏は、国際人権法の定義と仕組みを説明し、多様なアクターによる多層的な国際人権法の実施が見られるようになったと昨今の潮流を紹介しました。理論上、国際人権法(条約と国際慣習法)は企業に直接の働きかけは行えず「国家」を介す必要があります。しかしグローバル化により企業の力が増大、法的枠組み(国際・国内法)と社会的責任(市場やレピュテーション)の結びつきにより、企業は国際人権基準の遵守を社会から直接期待されていると述べました。また英国のスマートミックス政策として、国家領域の内外、法規制と企業や市民社会による自主的な動きの垣根を越える政策が手探りで取られ始めていることが紹介されました。

 

DAY1-2「ビジネスと人権:総論」

講師:佐藤 暁子氏(弁護士 / ヒューマンライツ・ナウ事務局次長)

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佐藤氏は、指導原則に関わる議論の進展をグローバル・日本国内の視点から概説した上で、日本企業が直面する課題示しました。指導原則発行から10周年を迎え、欧米では人権DDの義務化が進んでいます。日本では投資家の関心が高まっている一方で、人権を中心に据えた視座からの取り組みが日本企業では遅れていることが課題だと述べました。企業はステークホルダーとの対話をもとに事業活動全体を俯瞰し人権リスクを分析するべきだと考えています。また救済へのアクセスの担保、人権リスクの把握を対外的に示すための情報開示の重要性を強調し、企業に対するベンチマークの報告書をグローバル基準とのギャップ確認に活用することも有用と述べました。

 

DAY2-1「技能実習生」

講師:小山 正樹氏(JAM労働相談アドバイザー / 在日ビルマ市民労働組合(FWUBC) 顧問)

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小山氏は技能実習制度が孕んでいる構造的な問題を説明されました。母国からの送り出し機関に借金をしているため、雇用主による脅迫・監視・暴力などを我慢せざるを得ない環境に技能実習生が置かれている実態があります。こういった技能実習生の受け入れ環境の一因は、技能実習生を受け入れている企業の約80%が従業員規模50名以下の零細企業であることを説明しました。取引先との価格交渉力の欠如のため、低賃金・長時間労働技能実習生を酷使せざるを得ない受け入れ企業の現状が構造的な問題と指摘しました。サプライチェーン上、発注側の企業については、製造現場に入り込む難しさも理解する一方で、実態把握への努力をしていかなければならないと主張しました。制度の抜本的な見直しのため、特に企業には「サプライチェーンにおける外国人労働者の労働環境改善に関するガイドライン」の活用を呼びかけました。

 

DAY2-2「開発と人権」

講師:木口 由香氏(特定非営利活動法人メコン・ウォッチ)

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木口氏は生態系破壊・人権侵害をおこす大規模なインフラ事業に間接的に関わる企業・投資家は、資金の流れ、人権リスクの管理、救済方法を確立する責任があると強調しました。メコン下流域で進んでいるダム開発を事例に、自然資源やそれに頼る人々の暮らしは数値化が難しく、開発の現場では過少評価されることが多いこと、また、一党独裁体制の政権下では市民の抗議や苦情の声が届かないことを説明しました。ダム建設、道路建設、灌漑事業などに関わるプラント建設、建設部品のサプライヤーなどの企業・投資家は負の影響に留意して事業を行うべきと呼びかけました。

 

DAY3-1「ミャンマーとビジネスと人権」

講師:渡邉 彰悟氏(弁護士 / 在日ビルマ人難民申請弁護団代表)

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渡邉氏は1960年以降のミャンマー情勢と関連する日本政府や企業の動きを説明した上で、日本ではミャンマー人の人権への配慮よりも、経済や政治が優先されてきた実態に疑問を投げかけました。2011年に新政権が樹立した後、日本ではミャンマーは民政移管したとみなされるようになり、日本におけるミャンマー人の難民保護が減少しました。同時に多くの日系企業ミャンマーに進出したと説明。民政移管後もクーデター以前から国軍による人権侵害が行われていたという実態があるなかで、当時の人権デュー・ディリジェンスが十分だったのか検証も必要だと指摘しました。

 

DAY3-2「労働者の人権」

講師:田中 竜介氏(ILO駐日事務所 / プログラムオフィサー 渉外・労働基準専門官)

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田中氏は、労働者の権利としてのディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)について説明しました。ディーセント・ワークを達成する手段としての国際労働基準、中核的労働基準を紹介し、その策定の背景について解説しました。また、日系企業が人権デュー・ディリジェンスを実施する際の課題を示した上で、各国における人権に関する取り組みがさらに浸透する前に日系企業が対応を強化しなければ、今後投資家や国際社会への説明が困難になる恐れもあると指摘しました。労働者の権利について、企業はNAP規定で示されている労働基準を活用し、足りない部分については政府に働きかけることが大切だと述べました。

 

DAY4-1「パレスチナにおけるビジネスと人権」

講師:高橋 宗瑠氏(大阪女学院大学教授) 

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高橋氏は、イスラエルによる組織的な人権侵害は、パレスチナ人の移動の自由を制限し、資源略奪や軍法による恣意的な法執行など、さまざまな国際法違反行為に及んでいると説明しました。イスラエルによる人権侵害については、国際的に強く批判されはじめており、ボイコット運動が日本企業を対象にするのも時間の問題であると指摘しました。そして、イスラエルの企業・機関でアパルトヘイトに関連しないものはないため、日本企業はそれらと提携すべきではないとの考えを述べました。

 

DAY4-2「ウイグルとビジネスと人権」

講師:阿古 智子氏(東京大学大学院総合文化研究科教授) 

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阿古氏は同化政策、強制収容・強制労働といったウイグル族への人権侵害の実態を具体的に紹介しました。中国の東部と少数民族の多い西部の経済格差解消のためと銘打ち、最低賃金以下での労働や労働者に対する厳しい管理状況を地方政府が宣伝する状況があると言います。そして、欧米諸国や日本の有名ブランドに関わるサプライチェーンでもウイグル族への強制労働に関与しているとの調査結果が出ていることを指摘しました。日本は人権、民主主義といった普遍的な価値観を重視し、長期的視野を持って戦略的に中国との関係を構築すべきであり、企業や専門家と連携した調査、民主主義における熟議、法律の制定、政策立案などが必要であると訴えました。

 

受講者の感想

連続研修「ビジネスと人権アカデミー」は好評のうちに終えることができました。全講座を受講してくださった受講生の方々からは以下のような感想を頂きました。

 

・私はビジネスと人権について少し知見があるレベルの企業人ですが、より学びを深め、具体的にビジネスにどう適応していくか考える良いきっかけになりました。

 

・人権のセミナーは今、毎週たくさん無料で開催されているが、本講座はさらに深く講義をお聴きでき、有料だが参加して良かったです。

 

・全体像の把握と各種テーマに分かれていた構成だったので、情報の整理と理解を深めるのに有益でした。

 

・カリキュラムの構成が良かったと思います。国際人権法とビジネスと人権の総論から始まり、国内人権問題、そして国際人権問題と繋がるところがよかった。

 

・人権に関する情報がまとまって聞けてとても有意義でした。定期にこのようなセミナーがあると情報が得られ助かります。

 

おわりに

今後も「ビジネスと人権」の分野への注目がますます増加すると予想されます。このような社会的ニーズにお答えするためにも、これからもヒューマンライツ・ナウは「人権リスク」を中心に据えた形で「ビジネスと人権」に関する情報を発信していきます。今後開催予定のイベントにもぜひご参加ください。

 

【イベント報告】3/9開催ウェビナー「Yes Means Yes!の実現を求めて」〜国際女性デーイベント〜

ヒューマンライツ・ナウ(HRN)は2022年3月9日(水)に3月8日の国際女性デーに合わせて、「Yes Means Yes!の実現を求めて〜国際女性デーイベント〜」を開催いたしました。

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本イベントでは、性暴力について取材をされているライターの小川たまか氏、目白大学心理学部心理カウンセリング学科専任講師で臨床心理士公認心理師/博士(心理学)でもある斉藤梓氏、Speak Up, Sophia 共同代表である山崎彩音氏、Speak Up, Sophiaメンバーの加藤真央氏をゲストスピーカーに迎え、HRN副理事で千葉大学教授の後藤弘子の司会のもと、日本での同意に基づく性犯罪法(「Yes Means Yes」法)の実現に向けて、現状の課題や想いをお話ししました。

 

 

開会の挨拶

HRN理事、女性の権利プロジェクトリーダーであり弁護士の雪田樹理が開会の挨拶をし、同プロジェクトの取り組みについて紹介しました。

 

HRNは2017年の刑法改正以前から、性暴力や刑法改正の問題に取り組んできました。(当団体の刑法改正に関する活動の詳細は以下のリンクよりご覧になれます。https://hrn.or.jp/activities/project/women/womensrights-2020/ )

 

その後、フラワーデモなどを経て、社会に性暴力被害者の声が広がり、法制審議会での議論がようやく昨年から始まりました。

 

またHRNは、諸外国の法制度の実態調査を行い、世界の法制度の流れが「No Means No」型*1 から「Yes Means Yes」型*2に変わりつつあることを認識しています。現在、法制審議会では「No Means No」を勝ち取ることを目的としていますが、さらに我々が目指すべき「Yes Means Yes」を実現するためにどうすれば良いか、ということをゲストスピーカーの方と議論していきます。

中山純子「No Means NoからYes Means Yesへ 法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会について」

HRN女性の権利プロジェクトメンバーで弁護士の中山純子からは、法制審議会刑事法部会における刑法改正に関する現在の議論状況についての報告がありました。

法制審議会の概要

2021年9月16日に法制審議会第191回会議において「性犯罪に対処するための法整備に関する諮問第117号」を刑事法(性犯罪関係)部会に付託して審議し、部会から報告を受けたあと改めて総会で審議することが決まり、現在その会議を受けて法制審議会で議論がなされています。

 

諮問第117号には主に10個の論点があり、全論点について1巡目の審議が終わっています。

  1. 177条暴行・脅迫要件、178条心身喪失・抗拒不能要件の議論
  2. いわゆる性交同意年齢の引き上げ
  3. 地位関係性利用等罪の新設
  4. わいせつな挿入行為の取扱の見直し
  5. 配偶者間における177条等の成立の明確化
  6. グルーミング罪の新設
  7. 公訴時効の見直し
  8. 司法面接の録音録画媒体に証拠能力を認める特則の新設
  9. 性的姿態の撮影・提供に係る罪の新設
  10. 性的姿態の画像等の没収・消去

 

2022年1月26日時点の委員構成としては以下の通りです。

 

役職 人数
部会長 1
委員 16
幹事 (議決権なし) 12
関係官 1

 

内訳 

刑法学者 9人
刑事訴訟法学者 2人
検察庁 1人
裁判官 1人
被害者支援弁護士 2人
刑事弁護士 2人
精神科医 1人
臨床心理士 1人
被害当事者 1人
関係省庁 9人

(関係省庁:法務省警察庁最高裁判所事務総局・内閣法制局

177条暴行・脅迫要件、178条心身喪失・抗拒不能要件の議論状況

以下の2点については共通認識が形成されているとのことでした。

①性犯罪の処罰規定の本質は、被害者が同意していないにもかかわらず性的行為を行うことにある

②例示列挙と包括要件の二段構えで規定する

 

例示列挙と包括要件の具体的に挙げられている候補は以下の通りです。

(中山のスライドより)

 

177条

178条

例示列挙の候補

暴行

脅迫

威力

威迫

監禁

偽計・欺罔

不意打ち

驚愕させる

人の無意識

心身の障害

睡眠

アルコールや薬物の影響

精神的・継続的虐待

同一性の錯誤・行為意味内容の錯誤

洗脳(心理的支配)・宗教の影響

包括的要件

「又はその他意思に反する」

(検討会報告書p9)

「抗拒・抵抗が著しく困難」

「拒否・拒絶が困難」

「又はその他の脆弱な状態に乗じ」

「その他の意思形成、意思伝達又は意 

 思に従った体の制御が困難な状態を 

 作出し、又は利用して」

「拒絶する意思を形成・表明・実現することが困難であることに乗じ」

 

ドイツ・スウェーデンの法律状況

続いて、No Means No 型の性犯罪規定をもつドイツ、Yes Means Yes型の性犯罪規定をもつスウェーデンにおける法律の状況を説明しました。

 

ドイツでは刑法第177条で明確な不同意を条文に規定しています。

スウェーデンはレイプ罪について規定している刑法第6章第1条の冒頭で「任意で参加しないものに対し」と定め、任意であるか否かについて明確な規定がなされています。加えて、Yes Means Yes 型の特徴として、過失レイプ罪を制定しています。過失レイプ罪とは、他人が自発的に性行為に参加していないという事情に関して注意を著しく怠った者が問われる罪です。それが認定された過去の事案では、スウェーデンの裁判所が「自分の意に反して性的侵害の対象となった者には、Noと言う、あるいは不本意であることを表現する責任はない」と言う立場を表明していると中山は述べました。

小川たまか氏 「被害当事者が見ている社会とは〜暴行・脅迫要件のハードルは『ほとんどない』わけない〜」

『告発と呼ばれるものの周辺で』、『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』の著者で、主に性暴力問題を取材されているライターの小川たまか氏からお話を伺いました。

 

まず、性被害を受けたと認識している人だけでなく、潜在的により多くの人が性被害当事者であり得るという指摘がありました。なぜかと言うと、記者や支援弁護士に辿り着ける被害者は少数派であり、警察で被害が認められないことや、そもそも被害者が自責の念にかられて告発できなくなる場合があるからです。

 

次に小川氏は、EUで同意なき性行為が強姦とみなされるニュースについてのネット上の反応を紹介し、日本社会の認識と現状の差について懸念を示しました。 

暴行脅迫要件のハードルの高さ

続いて、現在の日本では「性的行為」と「性犯罪」を分けるものは「性的同意」ではなく「暴行・脅迫の有無」であり、被害者にとって暴行脅迫要件のハードルがどれだけ高いか、ということを2つの事例を用いて訴えました。

 

例1)7年ぶりに実の娘(13歳)に会った父親が車の中で性的行為を行った事件

この事件で、加害者である父親が課されたのは条例違反に対する罰金のみでした。

理由は以下の通りです。

①被害者は、実の父親がそのような行為をするということに驚き体が固まってしまい、暴行脅迫がなかったため「強制わいせつ罪」は認められなかった。

②被害者と父親が会ったのは7年ぶりで、監護していた事実がなかったため「監護者わいせつ罪」も認められなかった。

当時女の子は13歳でしたが、もし12歳であれば「強制わいせつ罪」が認められていたはずでした。

 

小川氏は、「性的同意年齢を引き上げずとも淫行条例があるから良い」とは言えないと主張しました。淫行条例は罰金刑のみである上に、暴行脅迫要件のハードルの高さを議論している被害当事者にとっては全く筋違いであるからです。

 

例2)19歳の女性がスポーツクラブで会った初対面の男性に誘われ飲酒の上、自宅に連れ込まれた事件

この事件では、加害者の男による「うるせえ、殺すぞ」という発言や、被害者の女性が毛布で口と鼻を塞がれたという事実がありましたが、

①行為を撮影していた動画で「やめて」と女性が言っているが、それは性行為の拒否ではなく撮影の拒否である、とみなされ、「強制性交」が認められなかった。

②意識があり、抵抗できているから「準強制性交」も認められなかった。

という判断の結果、不起訴になりました。

 

被害者にとって暴行脅迫要件、抗拒不能という要件がどれだけハードルが高いかが顕著に表れている事件であると小川氏は指摘します。

不同意性交等罪の必要性

さらに小川氏は、不同意性交が罪になると認められたとしても、不同意を証明する責任は基本的に被害者側にあるのだから、被害者の負担はほとんど減らないのではないか、という議論をイギリスで聞いたことを共有しました。

しかし、不同意性交等罪が認められるような法改正によって、日本社会にある「明確な脅しや暴行があった場合のみが性暴力である」という認識が、「性行為には同意が必要だ」「暴行脅迫がなくても性暴力であり得る」という方向へ改善されることを期待すると述べました。

 

最後に、小川氏個人の所感として、日本社会では冤罪のなかでも性犯罪についてのみ注目度が高いことについても疑問を呈しました。

 

斉藤梓氏「性暴力被害に直面した際の被害者の心理について」

目白大学心理学部カウンセリング学科専任講師の斉藤梓氏は、子どもから大人までを対象に、殺人や性暴力被害といった出来事によるトラウマやPTSD、外傷性の悲嘆などの問題について研究や臨床を行っている専門家です。現在、法制審議会のメンバーとして刑法改正の議論にも参加されています。心理職の立場から、性暴力被害に直面した時に人はどのような状態になるのかについてお話しいただき、今後の刑法改正でどのような実態を踏まえてほしいかを示されました。

性暴力被害に遭遇した際にどのような行動をとるのか

はじめに、男性も女性も積極的な抵抗をしていないという研究結果を示されました。また、たとえ抵抗するといっても、性暴力の被害は長時間続く場合もあるので、被害に遭遇している最中ずっと抵抗をしているわけではないことを強調しました。

 

続いて、研究や臨床治験をもとに、脅威に晒された時の一般的な反応について報告がありました。

 

まず、身体の安全の危機に晒された時は、凍りつき頭が真っ白になる。(Freeze) 

次に意識的にも無意識的にも状況を打開することを考え、闘ったり逃げたりする。

(Flight or Fight)

それでも状況を打開できないとなると、相手を宥めたり友好的な態度を取るといった慣れ親しんだ対処法を取る。(Friend)

それでも危機を乗り切られないとなった時は、意識を切り離す、つまり意識は鮮明だが体が動かない、自分の体から意識が切り離されてふわふわと夢を見ているような状態になったり、自分が身体から離れて遠くからその光景を見ているような気がする、という反応を示すことがある。(解離、Tonic immobility 擬死状態)

そうした被害が継続的に繰り返されると、自分はこう言った状況をどうにもすることができないという感覚(学習性無力感)を感じたり、相手に従う方がまだ危険(殴られたり首をを締められたりすること)が少ないと感じ、加害者に従ったり宥めたりという言動がなされることもある。(Fawn)

 

このように、脅威に晒された時の反応はさまざまであり、「抵抗する」というのはそれらのうちのほんのひとつの行動パターンであるといえます。

 

関係性における抵抗不能

グルーミング 

グルーミングとは、加害者が子どもの環境や重要な他者(親など)に働きかけ、子どもの信頼、依存心や好意を利用して性加害に及んでいくという、「性的手懐け」のことです。

好意や依存心を利用して徐々に近づいていくため、被害者は自分が被害に遭っていることを自覚しにくく、他人への相談がしづらいということが大きな問題点であると斉藤氏は指摘しました。現在法制審議会でも議論されています。

エントラップメント

エントラップメントとは、日常生活の中で加害者が自分の価値を高め、権威づけ、被害者を貶め弱体化し、逃げ道を塞ぎ、突然性的な話題にすり替えて性交を強要することです。女性は従順であることがよしとされる、または、人間関係で波風を立てるべきではない、といった文化規範もあり、被害者は拒絶することが難しいといいます。

 

斉藤氏は、自身が所属する研究チームのメンバーの方の研究を元に、地位関係性を利用した性被害発生のプロセスを説明しました。

 

フェイズI: 性被害が生じる前の加害者と被害者の関係 

加害者は被害者を評価指導する立場で周囲からも被害者からも信頼を集めている場合が多い

フェイズII: 性被害が生じる前段に見られる加害者の動き

加害者が被害者に対してセクハラ・モラハラを行ったり、飲酒させたり、密室を作るといった予兆的行動を取るが、被害者は上下関係やコミュニティにいられなくなる懸念から明確な抵抗ができない

フェイズIII:  性被害の発生

加害者が被害者に性加害をするが、被害者は受け流そうとしたりやんわりもしくは明確に抵抗する場合もあれば、上下関係やハラスメントが行われている状況の中で抵抗すらできない状況に追いやられている場合もある。

※このような状態を「重大な不利益を憂慮される洗脳(心理的支配)、驚愕・困惑・不意打ち」という文言で表現できるかということも法制審議会で議論中だそうです。

フェイズIV: 性被害が生じた後に見られる加害者の動き

加害者は性加害を恋愛感情・好意の表明、指導者の義務、被害者への心理的依存などだとして正当化し、被害者はそれを被害だと認識してしまうとコミュニティにいられなくなると恐れたり、加害者の巧妙な誘導により自己責任化したりしてしまうため、加害者の正当化の一時的受容をすることがある。被害者は身体的精神的不調をきたす場合がある。

フェイズV: 被害者による性被害の自覚と告発

被害者に加害者が愛情をもっていないことが露呈したり、被害者があまりにも深刻な心身の不調から第三者に相談して被害が発覚することがある。

 

加えて、斉藤氏は、一見対等に見える関係性でも性暴力が起こり得ることを指摘し、関係性のある加害者から被害を受けた方々がそれを性暴力だと認識することは今の日本では非常に難しいと訴えました。

性暴力前の予兆行動

関係性のある加害者の場合「予兆行動」が見られる

 

上下関係がある場合

→さまざまなハラスメントをする・飲酒させる・密室を作る等

 

対等な関係の場合

→上下関係を作り出す(被害者を下にみる言動)・事前に性的な誘い、性的でない遊びの誘いを繰り返す・飲酒させる等

 

「暴行・脅迫」のある性暴力はごく一部で、それらを使わずに巧妙に強要する場合や、困惑・驚愕を利用して強要する場合が多い、と斉藤氏は強調しました。これらをできるだけ適切に法律の言葉に落としこむために法制審議会で発言している、と斎藤氏は述べました。

Speak Up, Sophia 「性的同意ってなんだろう」

続いて、上智大学エンパワーメントサークルSpeak Up, Sophia の山崎彩音氏、加藤真央氏のお二人にお話しいただきました。

性的同意を文化にする

まず性的同意を紅茶に例えた動画をご紹介いただきました。


www.youtube.com

 

Speak up, Sophiaとしては、性的同意とは全ての性的な行為について確認されるべき同意のことであり、非強制性、対等性、非継続性が確認されるべき性的行為についての同意であると主張しました。さらに、はっきりNoと言っている場合以外は同意があるとする現在の日本の社会通念を捉え直し、はっきりYesと言っている場合以外は同意がないとすべきであると訴えました。

大学生にとっての性的同意

大学生には、性別問わず性的同意の重要性についての共通認識はあるが、性的同意の具体的内容への理解は不十分であると山崎氏は主張しました。特に、カップル、夫婦、パートナーなど、親密な関係における性的同意の重要性への認識が不十分なのではないかといいます。実際には、顔見知りからの性暴力被害が多数をしめるにもかかわらず、いまだに日本社会では、夜道に1人で歩いているところを襲われるといったレイプ被害のみが性暴力であるといった間違った認識が支配的なのではないかということです。実際に授業内で行ったアンケートの結果によると、性的同意について正しい認識を持っている学生は少ないと懸念を示しました。

 

加藤氏は、日本の性教育の不十分さによって、学生は実際どのように性的同意をとればいいか、性的同意がとれているか、がわかっていないと指摘しました。また、「毎回性的同意を聞くのはムードが壊れないか?」「性行為に対してNOということ=相手を嫌いだと表明すること」のように捉えている学生について言及しました。加藤氏は性的同意をそこまで堅苦しいものではなく、相手をよく知るコミュニケーションの一環だと捉えているといい、性的同意について正しい認識を持っていない学生が多いのは、知る機会が少ないためではないかといいます。Speak Up, Sophia はこの状況を改善するために、大学のオリエンテーションキャンプで性的同意について知らせる試みをしているそうです。

 

パネルディスカッション・Q&A

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イベントの後半には、小川氏、斎藤氏、山崎氏、加藤氏の他に、HRNの伊藤和子、後藤、中山が加わり、パネルディスカッション・Q&Aを行いました。参加者からも興味深いご質問をお寄せいただき、議論も大変盛り上がりました。

 

小川氏と斉藤氏は、性的同意について確実に社会の認識が変わって来ているのは、若い世代の活発な働きかけも一因であると述べ、それに比べて遅れている法制度の改善の必要性を再度訴えました。また、山崎氏は性暴力を女性のみの問題にしてしまうことに疑問を呈しました。中山は、法制審議会で同意について言及されてはいるが、「同意とは一体何なのか」についてより真摯に議論され、共通認識が形成されることを望むと述べました。伊藤は、法制審議会では加害者と被害者の対等性についてや、不同意性交についての現実を正しく認識されていないのではないかと指摘しました。

法の言葉の問題点について

斎藤氏は、法律においては時間のプロセスを幅広くとらえることが困難であり、直前の状態や関係性、行動を言葉にするような作り方しかできないことを問題点に挙げました。小川氏は、法律の言葉が警察官によって現場で被害者を救うために適切に運用される必要性を指摘しました。伊藤は、法改正はただ言葉を変えるだけでなく、実際に被害者を救うような運用をされなければならないと述べ、後藤は、近しい関係に起こった性暴力を訴えることのハードルの高さと、被害者の負担軽減のための法改正が必要だと述べました。

伊藤和子「刑法改正の提案 No Means No から Yes Means Yesまで」

HRN副理事の伊藤和子が、当団体が昨年12月に発表した「刑法性犯罪規定の改正に関する要望書」に基づいて、刑法改正の提案について報告しました。

 

要望書の詳細は、以下のリンクからご覧になれます。

https://hrn.or.jp/news/21204/

 

閉会の挨拶

閉会の挨拶で伊藤は、ゲストスピーカーへの感謝と、刑法改正とYes Means Yes の実現に向けた連帯への期待を述べました。最後に、国際女性デーに寄せて、現在ウクライナミャンマーで過酷な状況に置かれている女性への連帯を呼びかけました。

 

終わりに

このイベントにご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました。

 

私たちヒューマンライツ・ナウは、引き続き刑法改正、さらにYesMeansYesの実現にむけて、政策提言、調査報告、イベントの開催等を続けて参ります。ぜひこれからもご支援、ご協力のほどよろしくお願い致します。

 

(文・髙理柰)

 

*1:「No Means No」 型の法制度とは、被害者の同意のない性行為は全て「性的暴行」として処罰する法制度のこと(出典:HRN「性犯罪に関する各国法制度調査報告書」)

*2:「Yes Means Yes」型の法制度とは、相手方の自発的意思が明示・黙示に表現されていない場合に性交等をすることを処罰対象とする法制度のこと(出典:同上) 

【イベント報告】2/22開催ウェビナー「デジタル性暴力の現状と課題~大塚咲さんを迎えて~」

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2022年2月22日(火)、ヒューマンライツ・ナウはウェビナー「デジタル性暴力の現状と課題 ~大塚咲さんを迎えて~」を開催いたしました。

 

本ウェビナーでは、NPO法人ぱっぷす理事長の金尻カズナ氏、写真家の大塚咲氏をゲストスピーカーとしてお迎えし、ヒューマンライツ・ナウの伊藤和子副理事と共に、デジタル性暴力の現状と課題についてお話しいただきました。

 

 

金尻カズナ氏「~AV出演強要 デジタル性暴力の現状~ ぱっぷすによる報告」

はじめに、ゲストスピーカーの金尻氏に、「~AV出演強要 デジタル性暴力の現状~ ぱっぷすによる報告」というテーマでお話しいただきました。

 

性暴力の被害事例

性的搾取とは、「他者の利益のために、自分の性的同意が侵害されコントロールが奪われた状態のとき」を指します。その種類として、①ポルノグラフィー、②性行為、③その両方が挙げられます。デジタル性暴力は③に該当します。

 

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また、このような性的搾取がはびこる社会的要因についてもお話いただきました。

 

金尻氏は、社会の無関心をボトルネックとして、「性的搾取の深化」「性的搾取に関する法の未整備」「性的搾取を容認する社会」の負のサイクルがあると指摘されます。

 

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性的搾取対処の戦略基盤

次に、性暴力に対処するために重要な戦略基盤について、国連の報告書をもとに説明いただきました。

 

性的搾取の対処の戦略基盤として、「5つのP」と「3つのR」が挙げられました。

具体的な内容は以下の画像の通りです。

 

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ぱっぷすの活動

最後に、金尻カズナ氏が理事長を務めるNPO法人ぱっぷすについて、活動内容とその戦略基盤をお話しいただきました。

 

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活動報告では、2020年以降、若者の経済的困窮などを原因とした団体への新規相談件数が急激に増加している現状についてもお話ししていただきました。また、2022年4月からの成人年齢引き下げによって、18~19歳のさらなる被害増加が見込まれることに懸念を示されています。

 

このようにデジタル性暴力の問題には、まだまだ改善の余地があることが分かります。

金尻氏は、性的搾取の問題は正しく対処することで解決可能であると言います。

 

「性的搾取を自分たちの世代で終わらせるために、共に活動していこう」という力強いメッセージとともに、お話を締めくくられました。

 

大塚咲氏「肖像権と尊厳を守る戦い ~大塚咲さんを迎えて~」

金尻氏に続いて、デジタル性暴力被害の当事者であり現在は写真家として活動されている大塚氏から、インタビュー形式でお話を伺いました。

AV業界の現状

はじめに、AV業界の性暴力被害の現状について、ご自身の経験からお話しいただきました。

 

AV業界においては、業界内の人権侵害に対処する団体としてAV人権倫理機構が2017年に設立されました。しかし、大塚氏によると、まだまだ人権が守られているとはいえない現状があるといいます。

 

例えば、過去の出演作品について、出演者はAV人権倫理機構に販売停止を申請することができます。しかし、その申請にあたっては、以下のような問題点があります。

 

  • 出演作品を自身で探しまとめないといけないこと
  • 実際に削除されるまでに時間がかかること
  • 削除にいつまでも対応してくれないメーカーがいること
  • 販売停止申請ができるのを知らない出演者がいること

 

このようにAV人権倫理機構が発足したものの、十分に機能しきれていないことがわかります。

 

また、出演作品が同意なしでネット上に出回っていることも多く、AV出演者に対する重大な人権侵害が起こっています。



デジタル性暴力被害について

大塚氏自身の被害経験についてもお話しをいただきました。

 

大塚氏は、AV出演を引退して7年後の2019年、無許可で自身の素材がネットに挙げられたことを知りました。元々その素材をもっていたのが既に廃業したプロダクションであったために、大塚氏への連絡も一切なかったそうです。

 

AV業界には、「一度出演許可したのだから後々何をされてもいい」という考えが残っています。しかし、偶然得た性的な素材を無許可で使用することは出演者の人権の侵害に他なりません。

 

被害当時、大塚氏は既に写真家としての新しい活動を始めていました。それにもかかわらず無許可で過去の自身の素材を使用され、自分自身を踏みにじられているように感じたと言います。

 

裁判にかけた想い

また、大塚氏は、自身の素材を勝手に使用したメーカーを裁判で訴え、実質的勝利としての和解を成し遂げています。

 

裁判に至った背景として、出演者の人権を侵害し続けるAV業界の現状を見て「このままでは何も変わらない、何かしなければ」と思ったことが大きかったと言います。

 

裁判で引退後の肖像権が認められたことで、同じようなデジタル性暴力の被害発生に対する抑止力になるのではないか、と大塚氏は締めくくりました。

 

伊藤和子「AV強要とデジタル性暴力の課題解決に向けて」

最後に、ヒューマンライツ・ナウ副理事の伊藤和子から、「AV強要とデジタル性暴力の課題解決に向けて」というテーマでお話をしました。



AV出演強要問題の現状と課題

はじめに、AV出演強要問題の現状について説明しました。

 

2016年3月、ヒューマンライツ・ナウはAV出演強要の深刻な人権侵害状況をまとめた報告書を発表しています。その結果AV出演強要は以前より広く認知され、政府が緊急対策をまとめるに至っています。

 

しかし、政府の対策が以前より進んだにも関わらず、AV出演強要問題には未だ多くの課題があります。

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具体的な課題の1つに、AV出演における「ワンチャンス主義」が挙げられます。

 

通常、著作権は作成後も長く保障されるものですが、性的な画像に関しては「一度使用許可をすればその後は何をされてもいい」というワンチャンス主義が蔓延しています。*1

 

デジタル性暴力被害を防ぐためにも、著作権法について改正し、ワンチャンス主義の修正が必要であると主張しました。

 

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解決に向けて

また、ヒューマンライツ・ナウが提言する具体的な解決案についても説明しました。

 

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本ウェビナーでは特に、契約をいつでも取り消しできるようにすること、児童ポルノと同様の拡散防止措置をとることが主張されました。

 

また、2022年4月の成人年齢引き下げの影響についても触れました。これまで未成年であった1819歳は契約取消権を行使できたものの、2022年4月からは18歳以上が成人として扱われ取消権を使うことができなくなります。*2このことにより、新たに18~19歳を対象にしたAV出演強要被害が増加するおそれがあります。

 

さらなる被害増加を防ぐためには、一刻も早い対策が必要です。

 

閉会の挨拶

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イベントの最後には、登壇者全員からイベントの感想・今後の抱負などが述べられました。

 

そのなかで、コロナ禍による若い女性の困窮化がデジタル性暴力被害に繋がっている現状や、成人年齢引き下げに伴う若者の被害増加のおそれについても話がありました。

 

デジタル性暴力の問題は、まだまだ多くの課題を残しています。

一丸となって引き続き取り組み続けよう、という意思表示でイベントが締めくくられました。

 

おわりに

 

本ウェビナーにご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました。

 

私たちヒューマンライツ・ナウは、引き続き女性の権利に関するイベントの開催、調査報告や政策提言を続けてまいります。ぜひこれからもご支援、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

 

(文・大谷理化)

*1:ワンチャンス主義とは、「実演家の著作隣接権の一つである録音権・録画権について、映画の製作時に自分の実演を録音・録画することを了解した場合には、以後その実演を利用することについて原則として権利が及ばないとする主義」のことです。(出典:東京都行政書士会HP)

*2:未成年の契約取消権とは、「成年者と比べて知識や判断能力の未熟な未成年者が、あやまって契約によって不利益を被らないよう契約を取り消しできる権利」のことです。

【第1弾】ビジネスと人権プロジェクトインタビュー企画 「私たちこうやって『ビジネスと人権』に取り組んでいます」

企業の「ビジネスと人権」の取り組みについて現場の声を伝え、多様なステークホルダーがどのような課題を抱えているのかを共有し、ビジネスと人権の取り組みを促進することを目的としたビジネスと人権インタビュー企画第1弾。

なお、本インタビュー企画は、多様なステークホルダーの活動促進のきっかけ作りとして、各企業のビジネスと人権にかかる取り組みを紹介させて頂くものですが、インタビュー実施以上の事実調査は行っておらず、その取り組みの具体的内容すべてを当団体として保障・賛同するものではございません。

 

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第1弾はユニ・チャーム株式会社のESG本部 ESG推進部の方々にインタビューをさせていただき、「ビジネスと人権」に取り組む中での課題や葛藤をお話いただきました。

取り組みの現状ときっかけ

ユニ・チャームは、創業当初より経営方針に「人権尊重」を掲げ、2017年には「ユニ・チャームグループ人権方針」を制定するなど人権重視の経営を長年続けていたそうです。より具体的なアクションを強化する様になったのは、2018年1月より「現代奴隷法」が施行されたオーストラリアの現地法人での取り組みがきっかけとなっています。

その後、世界的なESGへの関心の高まりを踏まえ、より積極的に経営課題として取り組むべく、複数部門に分散していたESGに関連する機能を統合し、2020年にESG本部を設置しています。

 

Q:ユニ・チャームにおける「ビジネスと人権」に関する取り組みの現状について教えてください。

人権に関するステートメントを公表しています。具体的には2017年に「ユニ・チャームグループ人権方針」(以下、人権方針)を制定しています。この人権方針をより具体的に推進するために、2009年に制定した「ユニ・チャームグループCSR調達ガイドライン」を「調達基本方針」に昇格させ、合わせて「ユニ・チャームグループサスティナブル調達ガイドライン」を制定しました。

これら方針・ガイドラインを実践する上では、会員制のオンラインプラットフォームに加盟し、このサービスが、企業がグローバルサプライチェーンにおける労働条件を管理・改善し、責任を持って調達できるように提供している実用的なツール、サービス、コミュニティ・ネットワークを活用しています。いくつかの現地法人で以前からサプライヤー会員としてこのプラットフォームを活用していましたが、2020年7月にユニ・チャームグループとして改めてバイヤー・サプライヤー会員として加盟をし直しました。現在は、仕入れ先であるサプライヤー様にも入会を推奨し、入会されたサプライヤー様とはプラットフォーム上でリレーションを結び、人権と持続可能性等に配慮したバリューチェーン構築に取り組んでいます。

なお、ユニ・チャームでは「内か外への原則」という独自の考え方があり、サプライヤー様にこのプラットフォームへの入会・利活用を推奨するには、まず我々がしっかりと実践することが大切だと考えて、自社の工場での利活用を徹底することを第一優先取り組み事項としています。

 

このように、まずは自分たちができることをしっかりやりながら、サプライヤー様とのリレーション締結を進めています。現在、約半数のお取引先様とリレーションを結ぶ段階まで進んでいます。COVID-19の影響もあり、プラットフォーム上でリレーションを結んだお取引先様への監査は延期しており、現地での直接的なデューデリジェンス等を直近2年間は行えておりません。

過去には、タイにおけるペットフードの原料調達先を対象に人権デューデリジェンスを行いました。

 

取り組みの中での課題

どのような点を課題に感じているかを伺いました。取引先のサプライヤーに対しては、購買部などと協力しながら調査を依頼し、プラットフォームの仕組みを活用したり、一社ごとにリモート面談を実施したりするなどして自社のバリューチェーン上の実態把握を進めているそうです。社会的な人権に対する意識の高まりもあり、多くのサプライヤーが協力的だと言います。

しかしながら、調査を進める中で発見された課題に対処することの難しさを感じていると言います。例えば先述の監査において、サプライヤーの工場などの建物に問題が見つかった場合、これを解決するには投資が発生することがあります。投資額の多寡によっては、短期間での是正が難しい場合もあるそうですが、「伝え続ける」ことが重要であり、中長期的に腰を据えた取り組みが必要だと言います。

また、直接取り引きをしている一次サプライヤーに留まらず、二次、三次と末端まで調査を求める風潮が強まる中、どこまで進めるべきかという葛藤もあるようです。担当者は、実際の調査を進めるなかで下記のような懸念点があると言います。

  • 指導力を発揮すればするほど統制機能が強くなり、サプライヤーの自立を損なうリスクが懸念される。
  • 是正要求をくり返している問題に対して改善が見られない場合、具体的なアクション(取引量の減少や、取引停止など)をとる可能性があるが、これによりサプライヤーの従業員に不利益が発生するなど負の影響が懸念される。

 

「ビジネスと人権」浸透の障壁

「ビジネスと人権」についてなかなか浸透しない背景は何かという問いについては、次のような消費者の商品選択が影響していると言います。

  • SDGsの浸透等により、環境への意識は高まっているが、実際に購入する際に「環境に良い」ことが商品選択の理由にはなりにくい。(同じ性能、同じ価格であれば、環境に良いものを選ぶが、性能低下や価格上昇を伴う場合は敬遠される)
  • 「人権に配慮していない」は企業や商品を拒否する理由にはなるが、「人権問題に取り組んでいる」ことが、積極的にその企業や商品、ブランドを選択する理由になるところまで現時点では至っていない。

「人権に配慮したバリューチェーン構築」に取り組んでいることが消費者の商品やサービスを選択する際の理由とならない限り、企業がより積極的に「ビジネスと人権」にコミットする動機づけは発生し難いのでは? と考察されていました。

また、人権に関しては世代間の認識の違いも大きいと話します。50歳以上の世代は人権を「触れ難い、触れたくない」と感じるのに対し、ミレニアルやZ世代の人たちは人権問題について感度が高く、行政はもちろんNPO/NGOや企業にも積極的な対応を期待していると言います。ミレニアルやZ世代の若者は、学校の授業でSDGsを学ぶなど、環境問題や社会課題について豊富な認識を有し、自分たちが積極的に取り組むべきと考えているそうです。しかしながら、意識は高いながらも、20代、30代は経済面で余裕がない場合が多く、社会課題解決に貢献しているからといって、割高な商品・サービスを選択できないケースがあると指摘します。

 

人権への意識を変えるために

社会全般はもちろんビジネス界に人権に関する意識がなかなか高まらない中で、どのような取り組みが求められているかについて考えを伺いました。まず「政府・行政の働きかけが重要」と指摘した上で、次の2点を挙げています。

  • 人権に対して一人ひとりが正しく理解することが大切。義務教育の一環で「道徳」「倫理」を学ぶ機会はあるが「人権」に深く言及した授業は世界的な潮流に比べて拡充する余地が大きい可能性がある。また「人権」という言葉からは「人権運動」等"過去の話し"を思い浮かべる人も一定数存在し、世界的に求められている「ヒューマンライツ(人権)」について、全ての世代が学び直す必要があるのではないか。
  • 企業側は、ステークホルダーが求めている情報開示については対応を進めざるを得ない。また、法制化に至らずとも、「ソフトロー」として一定程度の影響を及ぼす事象にもしっかりと対応していくことが大切。

このような人権に対する幅広い理解に関する重要性は「ビジネスと人権」を勉強する中でも感じると話します。

例えば、消費者の人権リスクである「製品の誤った使用による事故」「不十分な品質チェックや違法検査による製品サービスの安全性欠如」について、ユニ・チャームとしては相当の対応を継続していると考えているそうですが、「人権と関連づけて認識する」といった観点は改善すべきと考えているそうです(認識)。「社員一人ひとりが『今やっている仕事は、どれも人権につながっている』と意識して仕事してもらえるように伝えていかなくてはと思っている」と述べました。

 

今後に向けて

最後に「ビジネスと人権」に取り組む担当者として感じている今後の展望について伺いました。

Q: 今後の展望について教えてください。

基本的に我々が一つのユニ・チャームとして共通の基準で動けることです。その国・地域によって法律、祝日の数も違うのでその地域の行政の指導に従って、適切な企業運営をすることを前提として、なるべくユニ・チャームグループとしてより高い、より厳しい基準で人権も含めた対応をしていきたいと思っています。エシカルカンパニーという言葉も聞かれますが、エシカルな会社とは何かを考え続けることがとても大切だと思います。

 

編集後記

インタビューの中では「取り組みはまだまだ」という言葉が度々登場したのが印象的でした。取り組んでいるからこそ、ゴールなき「ビジネスと人権」への取り組みの難しさを感じていらっしゃるのではないでしょうか。お話を通して、ビジネスにおける人権に取り組む中ではサプライヤー、社員、消費者との関係の中で複雑に絡み合った障壁があるように感じました。同じように現実と理想の狭間で戦う同業他社、他業界、他セクターと葛藤を共有し、ネガティブな方向ではなく、ポジティブな方向へと考え、行動につなげることができるような場が多くの企業に求められているのではないかと思います。

また、人権についての理解を促進することの重要性も再認識しました。まだまだ人権という言葉は私たちの生活と結びつかないことが多いです。身近にあるものだということを様々な角度から伝え続けることが弊団体の重要な役割でもあると感じました。結果として、「人権を意識するビジネスの当事者かつ人権を商品選択の理由とする消費者」が増え、「ビジネスと人権」の取り組みにつながっていくのではないでしょうか。

当団体も引き続きウェビナー等を通じたエンパワーメントに加え、私たちNPOを含めた異なるセクターがつながる場づくりを促進していきたいと思います。

 

(文責:土方薫)