HRN通信 ~「今」知りたい、私たちの人権問題~

日本発の国際人権NGOヒューマンライツ・ナウが、人権に関する学べるコラムやイベントレポートを更新します!

クーデタから1年。ミャンマー市民の人権を守りたい、HRNの活動まとめ

民主化が進んでいたミャンマーで、2021年2月1日に国軍がクーデターを起こしてから1年が経ちます。当時、国軍は1年間の「非常事態宣言」を発令。国軍が事実上の政府トップで党首のアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相、ウィン・ミン大統領を拘束し、国軍出身のミン・スエ副大統領を大統領代理として署名しました。立法・行政・司法の全権はミン・アウン・フライン国軍総司令官が掌握しました。

 

クーデタ以降、民主主義をもとめ抗議の声を上げる市民、活動家、ジャーナリストへの弾圧が続き、2022年1月現在、国軍による弾圧の死者数が1400人を超えました。都市部だけではなく、地方部でも国軍と民主派の衝突が見られ、民間人の虐殺が続いています。ミャンマー経済の収縮も続き、事態はより一層悪化しています。

 

国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ(以下、HRN)は、ミャンマーの自由と民主主義を取り戻すため、様々な活動を行ってきました。

 

今回は、前回記事で紹介した活動のアップデートという形で、2021年5月以降のHRNのミャンマーに関する活動をまとめます。私たちの活動報告を通してミャンマーの状況を知り、ミャンマーの人々のためにできることを一緒に考えていただければ幸いです。

 

 

 

 

声明の発表

【第47回国連人権理事会・声明】” Governments and International Companies Globally and in Japan Must Take Action to Address the Human Rights Situation in Myanmar”

 第47回国連人権理事会にて、世界、日本政府、国際企業に対してミャンマーにおける人権侵害の解決に向けてアクションを起こすよう求める声明を提出しました。

 

 声明の全文は以下からご覧いただけます。

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【共同要請書】日本政府はミャンマーに対する経済協力事業の全面的な見直しを

HRNが賛同した要請書が、2021年6月1日に日本政府に提出されました。

HRNは、6月1日までに同様の共同要請に2回賛同しており、今回が3回目となりました。日本政府からは明確な回答がなかったため、継続的な働きかけを続けていました。

 

要請書の全文は以下からご覧いただけます

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【参考:過去の共同要請書】

  •         日本の対ミャンマー公的資金における国軍ビジネスとの関連を早急に調査し、クーデターを起こした国軍の資金源を断つよう求めます (2021.3.4)

http://www.mekongwatch.org/PDF/rq_20210304.pdf

  •         ミャンマー国軍を利する日本政府の経済協力事業を直ちに停止するよう求めます (2021.4.1)

http://www.mekongwatch.org/PDF/rq_20210401.pdf

 

【共同声明】「日本:ミャンマーでの不動産開発事業を停止せよ 暴力的な軍との商取引は人権を損なう」

 2021年7月15日に、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、日本国際ボランティアセンター(JVC)、Justice For Myanmar 、メコン・ウォッチと共同で声明を発表しました。本声明では、日本の事業者及び諸関係機関はミャンマーの暴力的な国軍が関与する不動産事業(Yコンプレックス開発)から撤退するよう求めました。

 

声明の全文は以下からご覧いただけます。

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【共同声明】「米国の制裁に抵触する恐れがある投資家/日本企業に対する声明」

 2021年12月20日に、ヒューマンライツ・ナウ、日本国際ボランティアセンター(VC)、Justice For Myanmar、メコン・ウォッチと共同で声明を発表しました。本声明では、ミャンマー国軍が関与する不動産事業(Yコンプレックス開発)への投資が、米国の制裁に抵触する可能性があるとして、日本の投資家に対し再度撤退するよう求めました。

 

声明の全文は以下からご覧いただけます。

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報告書の英訳公開

報告書「ミャンマーの人権侵害と日本企業の関与と責任~ビジネスと人権に関する指導原則の観点から~」

 

現在でも行われている市民への暴力や、ロヒンギャをはじめとする少数民族の迫害など、ミャンマーにおける数々の重大な人権侵害は、ミャンマー国軍による行為です。報告書では、日本企業が関与するミャンマーでの人権侵害の事例や企業が果たすべき人権上の責任を明らかにしています。

 

HRNは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」の観点から、日本政府及び日本企業に対して事業活動をするなかで人権尊重を促進すること、現在も起こっているミャンマーでの深刻な人権侵害に加担せずに人権尊重への責任を果たすことを求めています。

報告書は日本語での発表のみでしたが、2021年10月に英訳版が公開されました。

 

全文(日本語・英語)は以下からご覧いただけます。

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ウェビナーの開催

ウェビナー「ミャンマーのクーデタ発生から4ヶ月 ~日本政府や企業に求められる対応とは~」を開催しました。

 

詳細・録画は下記からご確認いただけます。

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ミャンマーで国軍によるクーデタが発生してから4か月が経った6月1日、ウェビナーを開催しました。これまでの日本政府の対応と問題点について検証し、その背景にある「利権」の問題を取り上げています。また、クーデタ後の対立構造や少数民族をとりまく問題など、悪化し続ける現地の人権状況について報告しました。

 

本ウェビナーは、 ヒューマン・ライツ・ウォッチ (HRW)、メコン・ウォッチ、日本国際ボランティアセンター (JVC)、Tansaと共催で行われました。

 

笠井哲平さん(HRW)が日本政府の対応の遅れに関して指摘し、HRN佐藤暁子事務局次長は日本企業に対し国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に則った人権デューディリジェンス(人権DD)の実施を要求しました。木口由香さん(メコンウォッチ)は、人権DDの欠如の結果、官製ファンドの事業が国軍の資金となっている問題を指摘しました。関連して、渡辺周さん(Tansa)は日本の財界、各省庁、政治家が間接的に国軍に加担し、利権を貪る構造について言及しています。最後に、村主道美さん(学習院大学教授)から、軍政から民主主義への移行途中のミャンマー国内、国際社会の複雑な対立構造が解説され、ゾウーミントゥさん(在日ビルマロヒンギャ協会会長)は、日本国民と政府に対し、ミャンマーの国民統合政府と難民への支援をお願いしました。

 

記者会見

7月15日(木)11:00~「ミャンマーヤンゴン中心部における複合都市開発事業 (Y-Complex)」に関する記者会見

 

国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは、日本国際ボランティアセンター(JVC)、Justice For Myanmar、ヒューマン・ライツ・ウォッチメコン・ウォッチと共同で、「ミャンマーヤンゴン中心部における複合都市開発事業 (Y-Complex)」に関する声明を発表し、2021年7月15日に記者会見を実施いたしました。

 

詳細はこちらから:

hrn.or.jp

 

 

最後に

 

これからも、HRNは、ミャンマーの人権状況が少しずつでも改善するように、ミャンマー国軍の行為を批判し、日本政府や日本の企業への働きかけを続けていきます。

活動については、随時SNSやホームページで更新していきますので、ご覧ください。まずは私たちの発信を通して情報を知り、周りの人にぜひシェアしてください。関心を持ち続けること、それを広げていくこと、まずはそこから一緒にやっていきませんか。

 

(文責:羽星有紗