HRN通信 ~「今」知りたい、私たちの人権問題~

日本発の国際人権NGOヒューマンライツ・ナウが、人権に関する学べるコラムやイベントレポートを更新します!

【イベント報告】7/24開催ウェビナー「The Story of Plastic から考える環境問題と人権問題」

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ヒューマンライツ・ナウ(HRN)は国際環境NGOグリーンピース・ジャパンと共催で、2021年7月24日、オンラインウェビナー「The Story of Plastic から考える環境問題と人権問題」を開催しました。

リサイクル率も9パーセントと低く、ほとんどがごみとして処理されているプラスチックは、あらゆる「環境問題」を引き起こすだけでなく、その問題から、私たちの生きる権利・健康への権利・安全な水への権利・食料への権利に直接関わってくる「人権問題」も引き起こしています。

本ウェビナーでは、ドキュメンタリー「The Story of Plastic」を題材に、プラスチック問題を環境問題や人権問題として正しく認識し、問題解決につながる行動を促進するために求められることについて、NGO団体・企業・学生団体で議論を深めるました。

開会の言葉・ドキュメンタリー「The Story of Plastic」の概要

本ウェビナーの司会を務めた、グリーンピース・ジャパンの儀同千弥氏よりドキュメンタリーの概要の説明がありました。

【ドキュメンタリー「The Story of Plastic」】

化石燃料の抽出とプラスチックの生産は、多くの汚染を拭き起こし、近隣の阻害されたコミュニティーの健康的な環境への権利を侵害しています。しかしながら、化石燃料事業は、過度なプラスチックの量に対応出来ない国などにも市場を拡大し、成長を続けています。映画では、石油・ガス業界が巧みに情報操作による世界的なプラスチック汚染危機に至ったタイムラインを、この問題の最前線で活躍する専門家や活動家へのインタビューを交えて解説しています。

Zero Waste Maldivesからのメッセージ

Zero Waste Maldivesという、モルディブで環境問題に取り組む団体より、モルディブのプラスチックごみによる環境や人々への影響や、団体の活動の説明、また、持続可能な社会の実現へ向けた重要なメッセージをいただきました。

HRN公式HPにて公開しましたので、併せてご覧ください。

hrn.or.jp

各団体・登壇者のプレゼンテーション

四国一小さな上勝町から広がるゼロ・ウェイスト

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上勝町ゼロ・ウェイストセンターを運営するBIG EYE COMPANYのChief
Environmental Officer・CEOである大塚桃奈氏より上勝町でのゼロ・ウェイストの取り組みの紹介をしていただきました。

上勝町ゼロ・ウェイストセンターとは

上勝町ゼロ・ウェイストセンターは、ゼロ・ウェイストを促進する半官半民の複合型公共施設として徳島県上勝町で2020年にオープンしたそうです。この施設には、役場によって運営されている、町の住民が利用するごみ収集場や、大塚氏が経営するBIG EYE COMPANYによって運営されている、ゼロ・ウェイストに取り組む店舗やゼロ・ウェイストの体験を提供する宿泊施設などがあると言います。

上勝町ゼロ・ウェイストタウンになるまで

かつてはごみだらけであり、1970年代後半から1997年までごみの分別のルールもなく、大きな穴を掘り野焼きで処理をしていたという上勝町の過去について説明がありました。しかし、環境保全のために、ごみとの向き合い方を変え、ごみを分別して燃やさずに資源にし、ごみの処理で発生するコストを減らすための取り組みを行うようになったと大塚氏は言います。そして、2003年に日本の自治体初の「ゼロ・ウェイスト宣言」を発表し、2020年までに焼却・埋め立て処分をなくすための最大の努力をしてきた、とのことです。

上勝町のゼロ・ウェイストの取り組み

上勝町では、分別をするとき「燃える、燃えない」ではなく「再生できる、再生できない」という考えで行っていると大塚氏は最初に述べました。そして、上勝町のゼロウェイストの特徴には、住民が持ちこんだごみをゴミステーションと呼ばれるごみ収集場で回収していることや、くるくるショップという店舗では、使い捨てない容器の貸し出しや量り売りなど、ゼロ・ウェイストのビジネスのあり方を実現させていることが挙げられました。


特に、プラスチックの分別に関しては、5種類に分けて分別を行っており、町民にはプラスチックの容器包装を洗って乾かして持ってきてもらっているというお話しがありました。洗って乾かすだけで、100分の1のコストでリサイクルできると説明をするなど、住民の協力を促すために、ごみの処理コストとごみの行き先を可視化する情報を発信していると大塚氏は言います。また、そもそもゴミを出さないために、住民へのインセンティブとして、自分の容器を使って量り売りで買い物をすると「ちりつもポイント」を付与し、地域で使える商品券などと交換できる仕組みを作り出したと言います。

以上の取り組みで、上勝町ではごみを資源に変え、80%以上のリサイクル率達成したと述べました。

上勝町のこれからの課題

そんな上勝町では、ゼロ・ウェイストの取り組みを引き続き行うのに、二つの課題があると大塚氏は言います。一つには、上勝町の住民の53%が高齢者であり、これまでできたことでも歳をとると分別にやりにくさを感じるなど、高齢者にとって分別が負担になっていることです。もう一つには、これまでゼロ・ウェイストの取り組みを行ってきたものの、複合的プラスチックはリサイクルができないなど、未だ20%のごみはリサイクルできずに残っていることです。こういった課題の解決のために、これから上勝町は、物をつくる側が住民に負担なく、ものを循環させるといった、循環型のビジネスやコミュニティーのあり方を目指し、企業、自治体、研究機関と協力して取り組んでいきたいと大塚氏は述べました。

SDGsとダイバーシティに取り組む学生団体TIPS

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学生団体TIPS 統括代表の三浦央稀氏より、学生団体が行う環境や人権への取り組みについてお話しいただきました。

設立のきっかけと主な活動

設立当時に、日本でSDGsについての取り組みがなかなか見られなかったことや、多様性に対する意識が低かったことに気づき、学生として取り組めることはないかと思いTIPSを立ち上げたと三浦氏は言います。そこで、SDGsやダイバーシティの促進を行う上で、「SDGsダイバーシティ×学生の成長」を活動テーマに掲げ、環境問題や人権問題の解決にもつながる様々な活動を行ってきたと話します。

また、団体独自の活動だけでなく、企業や団体と連携して、オンラインイベントやSDGsに関する情報発信を行うなどの取り組みを行ったり、インドネシアでプラスチック問題に関する教育活動の実施など、日本国内外での取り組みも行ったりしているとのことです。

今後の目標

学生団体として、一人一人ができる小さなアクションを提案していき、SDGSダイバーシティを軸に環境や人権が配慮された経済が回る社会になるように努めたいと述べました。

組成調査からみるプラスチック問題

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NPO法人木野環境の上田祐未氏より、プラスチックごみのリサイクル状況についての解説をしていただきました。

ごみの組成調査

NPO法人木野環境の活動の一つに、実際に出る家庭ごみを並べて、ごみの量や種類などを調査するという、ごみの組成調査があります。

その中で、インドネシアの所得の多い家庭と低い家庭の家庭ごみの比較を行った際に、所得の低い方が、小さいプラスチックごみが多いことが明らかになったと上田氏は言います。一日の出費を抑えるために、個別包装された製品を使うことが多いことから、結果的に割高であり、ごみも出やすいとお話しされました。

また、インドネシアでのプラスチックごみのリサイクルの状況は、白いプラスチックやペットボトルが売られており、日本よりも高値で取引がされているとのことです。その理由として、原料であるナフサの需要が供給を上回っていることを挙げられました。
一方で、ケニアウガンダでは、プラスチックごみを買ってくれる企業がいないので、誰も回収せずにリサイクルも行わないと言います。よって、地域でのナフサの需要とリサイクル企業の有無で、プラスチックごみがリサイクルされるかどうかが決まるということです。

日本の家庭プラスチックごみの行方

日本には、容器包装リサイクル法により、容器包装(プラマークがついているもの)を、自治体で回収し、リサイクル業者が買い取って、リサイクルしているという仕組みが促進されていると上田氏は話します。それ以外のプラスチックごみは、リサイクル法の対象ではないことから、リサイクルされていないこともあると言います。

また、日本は自治体によって、プラスチックごみの処理方法が異なり、容器包装以外もリサイクルしているところもあれば、焼却カロリーを増やすために容器包装も燃やしているところもあり、さらには埋め立てているところもあるそうです。

プラスチックごみのリサイクル方法

プラスチックごみの全部がリサイクルできるわけではなく、プラスチックの性質や色によってリサイクルのされ方は異なると言います。複合的に生産されたプラスチックは別の製品にリサイクルすると質が落ちることがあり、使い道が限られることもあると現在のプラスチックごみのリサイクル方法についての問題点も挙げられました。

プラスチックとの新しい向き合い方

最近では、社会でプラスチックごみを減らしたり、企業で使用量を減らしたりするためのアプローチとして、海ごみ問題や地球温暖化が重視されていると上田氏は述べます。そして、バイオマスプラスチックや生分解プラスチックなどの新しいプラスチックが出てきており、それぞれメリットやデメリットがあるが、用途を考えて企業は導入するべきと示しました。

これから、プラスチックの原料であるナフサが手に入りにくくなり、プラスチックが使えないときがでてくるかもしれないということも考え、私たちの生活に必要なプラスチックは植物からつくるのかどうかなど、プラスチックの今後についても考えていきたいと上田氏は話していました。

『量り売り』から拡がる未来のための今の暮らし

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株式会社斗々屋 広報担当、サステナビリティコンサルタント、のーぷら No Plastic Japan 代表を務める、ノイハウス萌菜氏より株式会社斗々屋がどのように環境問題や人権問題に取り組んでいるのかについてお話をいただきました。

株式会社斗々屋の量り売りショップができるまで

プラスチックごみについての問題が報道されているにも関わらず、プラスチックフリーや包装なしの商品の選択肢が増えていないということを問題視していた株式会社斗々屋。もともと卸売事業としてオーガニック食材などの輸入を行ってきたが、2019年9月に小売業を始め、量り売りショップができたとノイハウス氏は話します。

その当時は、ゼロウェイストという言葉がなかなか浸透していなかったが、モデルショップとしてオープンして様々な取り組みを行っていると言います。そして現在は、店を移転し、商品の数や営業日を増やし、どのようにごみを出さずに営業していくかを常に考え運営しているということです。そして、新たにオープンするスーパーマーケット規模のお店では、ゼロウェイストの納品と販売が可能であることを見せて、ビジネスモデルとしての可能性を示していきたいとノイハウス氏は言います。

環境問題や人権問題の解決には連携が必要

株式会社斗々屋だけが徐々に量り売りの店を増やしていっても、なかなか人々のライフスタイルにゼロ・ウェイストの考えが浸透していかないと指摘します。そこで、株式会社斗々屋では、量り売りの店を開きたいと考えているお店に、ビジネスプランの書き方から開業のサポート、広報のノウハウなどを、オンライン講座や店内研修などを通して伝える取り組みを行っていると言います。量り売りの店のネットワークづくりやノウハウシェアは、ゼロ・ウェイストの考えを広める上で欠かせないとノイハウス氏は話しました。

株式会社斗々屋が扱う商品とは

株式会社斗々屋では、ゼロ・ウェイスト、オーガニック、フェアトレードの商品を取り扱っていると言います。ノイハウス氏は、これら3つのキーワードは環境と人権の両方に配慮していると説明しました。特に、人権に関しては、フェアトレードは、公正な取引ということで、人々に優しいのは明らかですが、ゼロ・ウェイストはごみを収集する地域に住む人々への健康被害を防ぐことができたり、オーガニックは農薬を使わないために消費者と生産者どちらにとっても負担がかからないことができたりすると述べました。

株式会社斗々屋のこれから

株式会社斗々屋は、製品を買う側のみゼロ・ウェイストを意識するのではなく、製品を作る側も考える必要があると言います。そこで、地元の生産者とのゼロ・ウェイストを達成するための開発や、ゼロ・ウェイストでの納品方法を伝えるなど、生産者とも協力してごみを減らす取り組みを行いたいと話しました。ゴミを減らしていくことは、商品を作る方、売る方、買う方全員にとって、ウィンウィンであるということをノイハウス氏は最後に伝えました。

リサイクルから考えるプラスチック問題

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国際環境NGOグリーンピース・ジャパンのプラスチック問題担当である、大舘弘昌氏よりプラスチックごみのリサイクルの問題点について解説をしていただきました。

リサイクルシステムが抱える課題

世界でわずか9パーセントのプラスチックごみがリサイクルされておらず、その中でも、質や機能を落とさない効果的なリサイクルは2パーセントしか行われていないことを示しました。ペットボトルからペットボトルに生まれ変わって使われるような取り組みは日本では進んでいるほうだが、それでもそのリサイクル方法は日本で十数パーセントしか利用されていないと大舘氏は言います。また、プラスチックのリサイクルと言っても、一度だけでなく、循環させて何度も繰り返すのは困難であることから、リサイクルはプラスチックごみ問題の解決策にならず、対策の一部にしかならないと主張しました。

日本のリサイクル率に関する事実

日本のプラスチックのリサイクル率のうち、約60パーセントがサーマルリサイクルという、温水プールの熱として利用する方法が利用されており、国際的にはリサイクルとカウントされない方法であることを明らかにしました。また、マテリアルリサイクルという、別の製品に生まれ変わる方法は23パーセントを占めるが、そのうちの約4割が東南アジアに輸出され、日本はトップ3のプラスチック輸出大国であると述べました。国内のみでそのリサイクル方法の利用を見ると、全体のうち13パーセントのみであると言います。

日本のプラスチックごみが海外に与える影響

日本から海外に輸出されたプラスチックごみの中には、そもそもリサイクルできないものや、汚れたものが入っていることもあり、結局そういったものを処分するために野焼きや不十分な焼却、埋め立てが地域で行われていると言います。グリーンピースは、現地調査を行い、リサイクルできないプラスチックごみの処分によって、住民への健康被害、環境汚染といった問題に直面していると明らかにしました。近年、有害廃棄物の取引を規制するバーゼル条約が締結され、日本でも減ってきているが、未だに国際貿易では、違法で輸出が行われていると言います。国内でもこれからプラスチックはたまっていき、焼却していくしかないので、まずはプラスチックごみの量を減らし、脱却することが必要だと訴えました。

プラスチックごみを減らすために企業・消費者ができること

大舘氏は、企業と消費者である市民それぞれに問題解決のためにできることを提案しました。まず、企業ができることは、ビジネスモデルを変革し、リユースベースを用いることだと言います。また、企業に任せるだけでなく、市民ができることとして、今の状況の変化のために声を上げるのが大切だと話しました。

環境×人権 プラスチック問題における人権侵害

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HRNのビジネスと人権プロジェクトインターンである塚本氏より、プラスチックごみが引き起こす人権問題について解説をしていただきました。

プラスチック問題と人権

プラスチック問題が引き起こしている環境問題は、人権問題にも繋がっていることを明らかにし、具体的な人権侵害について説明がありました。そして、問題の解決は、環境に関する国際的な人権の枠組みやSDGsの各ゴールとの繋がりがあると塚本氏は言います。

企業や政府が行うべきアプローチ

塚本氏は、国際人権規範をもとに開発のプロセスを行うといった、人権ベースのアプローチが企業や政府に必要だと訴えます。具体的には、マイノリティがより被害を受けやすいなど、環境被害の不平等性を明るみに出すこと、環境汚染などの被害を受けやすい人々の声が聞かれる場をつくること、被害者も参加して、問題の解決策について企業や政府と議論を行うことを挙げました。このアプローチを行うと、環境問題が引き起こす人権侵害の解決に近づけられるといいます。

環境問題が関連する人権侵害の例

プラスチック問題の被害を受けているのは、先進国の人々よりも途上国の人々であることや、富裕層よりも貧困層であることを明らかにしました。ごみの処理を押し付けられる地域では、特定のマイノリティへの影響があると言います。具体的な事例を見ていくと、ドキュメンタリーの中で挙がっていたように、インドの女性への影響があったり、ドキュメンタリーでは取り上げられなかった、南スーダンの先住民への影響もあったりするとのことです。

そして最後に、環境を守ることは、人を守ることであるように、プラスチック問題を人権問題としても捉えることの重要性について訴えました。

パネルディスカッション・Q&A

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パネルディスカッションでは、HRNの小園杏珠氏がモデレーターを務め、それぞれの登壇者の視点から、プラスチック問題の解決のためにできることについて議論を深めました。

各登壇者のプレゼンを聞いて思ったこと

大塚氏は、ごみ問題の解決のためには、ごみを集めるだけでなく、ごみを集める場面で人が集まり話し合うのが良いのではないかと提案されました。また、上勝町では、外部から調達したものを買うなど、外部からの製品に頼った生活になっていることを挙げ、外部からのものを地域内で循環させる方法を考えていきたいと話しました。

次に、学生団体TIPSのメンバーである、山本亜美氏は、ドキュメンタリーの感想を述べました。学生などの経済的に余裕がない消費者が、環境保全の問題を意識せずに、価格や労力を第一に商品を購入しているのが現状であることから、商品の生産者サイドのプラスチックごみを増やさないための変化は不可欠であり、生産者サイドに買う側の選択肢を増やすことを訴えました

そして、NPO法人木野環境の丸谷一耕氏は、ドキュメンタリーは海ごみの問題を中心にプラスチックの問題を取り扱っているが、実際の大手企業はプラスチック戦略について考えているものの、海洋汚染の問題は深刻に捉えていないことを明らかにしました。企業は、現在のプラスチックに使われている原料のナフサが使えなくなった場合にどうプラスチック原料を調達するかということに焦点を当てて、真剣に脱プラを考えていると言います。しかし、海ごみについては、日本ではあまり被害を受けていないという考えや、消費者の問題であるという認識が企業にはあると述べました。海ごみの問題から、プラスチック問題について注目されつつあるが、セクターごとにどうプラスチックと向き合っていくかを細かく議論し、目的と行動計画などの明確なロードマップの作成を企業に求めました。

また、ノイハウス氏は、プラスチック問題は、自分以外の多くの人々が影響を受けていることの理解を踏まえた上で削減に取り組むべきと言います。中でも、ゼロウェイストの取り組みをビジネスとしての成功のために利用するのではなく、連携や情報共有を行い、ごみを出さない社会構造の構築に努めることを生産者に呼びかけました

プラスチックごみを増やさないために個人ができること

大塚氏は、自分たちが日常に出すごみの量や、ごみの行方を知ることが大切と話します。また、上勝町の取り組みのように、ごみの処理によって発生するコストや、処理されている場所をごみの種類ごとに把握し、可視化することが大切ではないかと問いかけました。

そして、儀同氏はグリーンピースが公開した、量り売りのお店を可視化して使いやすくするためのマップツールの活用も個人ができることだと言います。それだけでなく、消費者が社会に声を届けていくことの重要性について話し、政策提言や企業にアプローチしている団体の支援や署名活動に参加することを提案しました。

また、消費者が社会に声を届ける手段として、意見がある場合、直接企業に問い合わせたり、意見ボックスを利用したりすることをノイハウス氏は挙げました。その際に、企業への改善して欲しい点だけを伝えるのではなく、商品を選んだ理由などの良かった点も伝えていくことが大切だと言います。そうすることで、企業は、消費者の声を反映するようになり、よりサステナブルな社会になると期待を込めて述べました。

さらに、塚本氏は、企業にプラスチック戦略の目的を明確化することが求められている中で、様々な消費者の関心に沿った目的を設定することが必要ではないかと言います。消費者は、便利さを求めたり、環境への配慮を求めたりするなど様々な意見があるため、コミュニケーションを通してそれぞれの消費者の期待に応えるよう企業に求めました

海外地域で起こるごみ問題の解決のためにできること

日本などからプラスチックごみが輸出されて処理が行われている東南アジアでは、地域の人々が深刻な環境問題や人権侵害に直面していることから、日本が取り組むべきことについて議論が行われました。まず、山本氏は、海外で処理されるごみの実態について幼いころから学校で学ぶべきだと言います。環境教育のように、分別の仕組みやなぜ分別が必要かを子どもたちに教えることで、永続的に効果を発揮するのではないかと示し、教育への投資を求めました。

次に、丸谷氏は、世界的なモノづくりのためのルール作りが必要と言います。少ないCO2排出量で生産されたプラスチックでも、リサイクルができないという特徴があるにも関わらず、きちんと理解せずにそのプラスチックをエコだと認識している企業が多くあると言います。そこで、どのような目的を達成したいのかを設定して、目的別に企業の取り組みを決めていくことが大切だと話しました。また、プラスチックごみの問題は、一企業だけでも日本だけでも解決できない問題なので、グローバルにルールを決めることを提案しました。そのために、日本の中で大きな枠組みをどうやってつくっていくかを考える必要があると丸谷氏は言います。しかし、日本政府はプラスチック戦略について全く考えておらず、プラスチック戦略について考えている政治家や政党もいないので、個人が選挙に行くことから始め、政治家のレベルを育てるのも考えていく必要があることを訴えました。

プラスチックごみを減らす上ででてくる問題点

プラスチックごみを減らす取り組みの中で、別の問題がでてきているのか、またその問題をどのように解決をしているかについて議論がなされました。

まず、ノイハウスは、量り売りは初期投資が必要だと言います。例えば、量り売りの入れ物、重機の開発や仕入れなどを行わないといけなかったことが挙がりました。しかし、量り売りのようにごみを減らす取り組みを行う店や消費者にとっては、良い面のほうが見られると言います。例えば、生産者側の視点では、包装のための素材を買わなくてもよかったり、包装をしないためにごみの処理に負担がかからなくなったりすると述べました。また、消費者もごみの量が減ることにより、時間や手間が減ると示しました。

また、大塚氏は過去の上勝町の失敗例を挙げました。上勝町では、過去に住民の高齢化により量り売りの店の需要が少なく成り立たなかったと言います。アクセスのしやすさや、地域の特徴を考慮して、地域に合わせた取り組みを行えば、問題は出てこないのではないかと述べました。一方で、地域同士でのパートナーシップが量り売りの広まりには不可欠なため、地域同士が取り組むようにするために、住民が選挙に行くのも大事なのではないかと提案しました。

全国の行政や企業から取り組みが広まるためには

丸谷氏は、行政でリサイクルの取り組みを取り入れるのは、かなり難しいと言います。NPO法人木野環境が、市町村でのごみの分別について話し合うことがあるが、市町村はごみの分別をふやすことを一番避けたいものと考えていると明らかにしました。市町村にとっては、住民説明会を何百回とすることが大変なので、職員のなかでなかなかその話が通らないそうです。そこで、選挙権を持った有権者から盛り上げ、市民の方から働きかけることも重要だと述べました。

三浦氏は、企業内で取り組みが広まるためには、様々な切り口からなんとなく問題に気付いてくれる人を増やすことが大切だと述べました。一方で、学生の頃は環境問題などに関心があっても、そういった関心と仕事が結びつけられないために、社内での取り組みがなかなか出来ないという問題点があると三浦氏は話します。そこで、関心のある学生が社会人になっても、社内でも活動できるような場が必要であり、TIPSは、架け橋をつなげていきたいと示しました。

閉会挨拶

本イベントの企画から関わってきた塚本氏は、環境問題や人権問題を二つの別々の問題として捉えるのではなく、根本的には人が関係しているということに気づいた上でどちらも取り組む必要があることをイベント開催にあたり伝えたかったと言います。パネルディスカッションで挙がったように、プラスチックごみを減らすための具体的な枠組みの構築、地域での分別の拡大、個人の問題意識の向上が、プラスチックごみが引き起こしている問題解決のためには不可欠であると訴えました。また、プラスチックごみによる人々への影響に焦点を当てることの重要性も述べました。本ウェビナーのような議論の場を設けることで人々の問題意識を持つようになればと最後に挨拶を締めました。

おわりに

私たちHRNは、引き続き環境問題やそれに関わる人権問題についてのイベントの開催、調査報告や政策提言を続けてまいります。

ぜひこれからもご支援、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

また、環境問題に関連する人権問題やプラスチック問題についてのSNS投稿を通して情報発信をしています。是非こちらもご覧ください!