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7/12開催「〜クラウドファンディング応援〜同意のない性行為は犯罪?!今、法改正が必要な理由」*イベントレポート*

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7/12開催「〜クラウドファンディング応援〜同意のない性行為は犯罪?!今、法改正が必要な理由」*イベントレポート*

 

7月12日、ヒューマンライツ・ナウでは「〜クラウドファンディング応援〜同意のない性行為は犯罪?!今、法改正が必要な理由」と題したウェビナーを開催しました。

 

刑法の性犯罪規定に関しては、2017年に110年ぶりに大幅改正されましたが、積み残された課題は多く、3年後である2020年に、規定が再度見直されることが約束されました。

 

今年6月から刑法性犯罪規定の改正に向けた検討会が発足し、現在も続いているのですが、2017年の大幅な刑法改正から積み残された課題の一つが「暴行・脅迫要件の撤廃」だったのです。

 

そこでヒューマンライツ・ナウでは、2020年の法改正で「同意のない性行為は性犯罪である」という法律を明確にすることを求めています。

 

今回のイベント開催の背景に賛同し、集まってくださったゲストは、フェミニストでアクティビストの本田綾里さん、Speak Up Sophiaのまーしーさん、そして性教育Youtuberのシオリーヌさん。そして司会はHRNプロジェクトサポーターのフリーアナウンサー佐々木真奈美で行い、ゲストの皆様からは性的同意や性教育などの観点から大変貴重なお話を伺うことができました。

 

人権軽視とジェンダーバイアスが性犯罪の根底に

ゲストトークのトップバッターはフェミニストアクティビスト 本田綾里さんです。

 

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Profile:大学卒業後、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスジェンダー修士号を取得。「これからフェミニズムを学びたい人へ」をテーマに、イベントやSNSを通じて発信。

 

まず本田さんが冒頭に触れたのは人権についてでした。

 

今世界ではNo means No(相手の同意がないまま、相手が拒絶しているのに性行為等をすることが犯罪とされる)の考えが広まってきていますが、日本でNoをNoと意味しない、嫌よ嫌よも好きのうちという考えがいまだにあるのには、人には、人格や意思があると認識する引き出しがないことが問題なのではないかと指摘し、一人ひとりの人権意識が著しく低いというのが根底にあるのではと語りました。

 

さらにジェンダーバイアス(偏見)も性暴力にも深く関わっているとし、

例として男性加害者側に対しては「男性の性欲は自分で抑制できないものである」という同意なしに性行為を行う加害者側の意思決定を軽んじる社会的認識や、

一方で被害者側には、「性行為をもってなんらかの利益を得ようとしていたハニートラップなのでは?」など、被害者側に責任転嫁をするような社会的認識があり、そのバイアスが法制度にも反映されていることが挙げられました。

 

また本田さんは、伊藤詩織さんの著書「Black Box」の中で紹介されていたスウェーデンストックホルム南総合病院へ取材に行き、病院に性暴力を専門とした医師や看護師が常駐していたり、男性被害者やトランスジェンダーなどあらゆるセクシャリティの方が性暴力を受けると想定した上で運営がされていたりしたことなどを紹介。

 

さらに世界各国の状況も踏まえ、現在13歳とされている日本の性的同意年齢の引き上げを含めた刑法性犯罪規定が変わるべきだと締めくくりました。

 

性的同意、正しく知っていますか?

続いては、Speak Up Sophia まーしーさんです。

 

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Profile:性的同意を上智大学で広めることを目的に活動。性的同意について考えるワークショップの開催やイベントの登壇、SNSを通じた発信中。

 

まずまーしーさんからは、性的同意とは積極的な意思表示と確認されるべき同意があり、大切なこととして、非強制性=「NOと言える環境がある」こと、対等性=「社会的地位や力関係に左右されない」、そして非継続性=「一つの行為への同意があっても、他の行為に同意したわけではないので逐一確認が必要であること」が前提にあるとの説明があったほか、性暴力とはレイプだけに限らず、痴漢や盗撮、セクハラなども含まれていることが語られました。

 

しかし、Speak Up Sophiaが大学の授業でワークショップを行った際、性的同意について正しく知っていた人の割合は約1割で、まーしーさんは「知るきっかけがないので興味が持てないという実態があるのでは」と述べていました。

 

その上で、学生団体のみならず、もっと上の立場の人が積極的に性犯罪防止に動いてくれてもいいのではと提言していました。

 

性教育は人権教育」 子供たちへのサポート

最後は性教育Youtuber シオリーヌさんです。

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Profile:現在は学校での性教育に関する講演や性の知識を学べるイベントの講師を務める。性を学ぶオンラインサロン「yottoko labo」オーナー。YouTuberとして性を学べる動画を配信中。

 

シオリーヌさんは、助産師として総合病院の産婦人科病棟で働いた時に直面した、様々な性や生殖に関する問題から性教育の必要性を感じ、精神科の児童思春期病棟に転職。リプロダクティブヘルス(性や生殖における個人の自由と法的権利)を守るためにも、性的同意年齢までには「もし妊娠したくない場合はどうしたら良いか」をちゃんと伝えるべきだと感じた一方、学校でコンドームの正しい使い方など具体的な性教育を行おうとすると「まるで学校が性行為を勧めているようだ」と言われてしまう現状を受けて、若者に人気のYoutubeに動画投稿を開始されました。

 

そこでミッションとして、

「中高生の権利を守るための学習をサポート」

「主体的にライフプランを選択できるためのサポート」

「きちんと子どもたちに伝えなくてはいけないと考えている大人をサポート」

していることなどを語っていただき、最後に、「性教育は人権教育だと思う。自分と相手の権利を尊重し、自分の人生を主体的に選びとっていける社会を子どもたちに残したい」とのメッセージを送って下さいました。

 

ヒューマンライツ・ナウでは今後も専門家と市民・学生がコラボして、性暴力被害者を守れる刑法の改正を実現してまいります。

今後の活動にも是非ご注目ください。