HRN通信 ~「今」知りたい、私たちの人権問題~

日本発の国際人権NGOヒューマンライツ・ナウが、人権に関する学べるコラムやイベントレポートを更新します!

*イベントレポート*4月2日開催「スポーツと機会の平等ータイトル9の理念をどう反映させるのかー」

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4月2日、ヒューマンライツ ・ナウ(HRN)はウェビナー「スポーツと機会の平等ータイトル9の理念をどう反映させるのかー」を開催致しました。

スポーツにおける男女平等はあらゆる点で遅れており、男性中心主義が教育とスポーツの現場でも貫かれています。HRNでは、「日本の教育機関における男女平等の推進」に関する報告書(【報告書】日本の教育機関における男女平等の推進 | ヒューマンライツ・ナウ)を2021年1月に公表しました。

同報告書は、アメリカ合衆国の連邦法で、学校における男女平等を目指すタイトル9のような法整備を行うことを提言しています。

本イベントでは、日本オリンピック委員会(以下JOC理事で筑波大学教授の山口香氏をお迎えし、スポーツにおける男女平等、そして日本版タイトル9実現のための施策について考えました。

イベントでは早速、ゲストの山口さんよりスポーツと機会の均等についてお話を頂きました。

その後、HRN後藤弘子副理事長とHRN三浦まり理事より、タイトル9とHRNの報告書「日本の教育機関における男女平等の推進」に関する解説がありました。そして最後は、三人のパネルディスカッションが行われました。

スポーツの機会と均等 山口香

女性スポーツの歴史

山口さんは、女性スポーツの歴史はまさしく差別と偏見への戦いだと仰います。山口さんが1978年第1回全日本女子体重別選手権大会(50kg級)で初優勝された当時は、女性選手の大会への参加が認められなかったり、「女性は守られるべき存在であり、激しい競技はできない」などの偏った考えが広く支持されており、女性がスポーツ選手として活躍する道が開かれていなかったといいます。現在でも、各種スポーツ大会の賞金における男女差など数々の課題が残っています。

「機会均等」とは

山口さんによると、機会の均等とは女性が男性基準に則することなく平等に機会を得られる状態を意味します。例えば、ラグビーやサッカーコートの大きさなど、競技におけるあらゆる規則は男性の身体を基準にして作られてきました。一般的に男性とは異なる身体的特徴を持つ女性にとって、既存のコートは自分のベストを出し切れる規格ではないのかもしれません。山口さんは、スポーツの機会均等は、男女の競技人口を同数にするだけでは達成できないと仰います。身体的特徴や女性特有の問題を考慮し、女性にとってプレーしやすい競技やルールを設けることでスポーツにおける男女の機会均等は実現されると強調されました。既存の競技やルールに女性を取り入れるだけでは、真の平等(=機会均等)とは言えません。

なぜ女性役員は重要か

現在スポーツ界で意思決定の場にいる女性の数は低迷しており、例えばJOCの役員における女性の割合は約20%、JOC加盟の67団体全体で約15%、さらにこの中には女性役員が0人の競技団体もあると言います。女性役員を増やすことが、現在のスポーツ界全体における急務であると考えられます。山口さんは、女性の身体や女性特有のスポーツに対する感覚は男性と大きく異なると仰います。このような違いをよく理解できる女性役員は、既存の女性のスポーツ人口の声を汲み取るだけでなく、幅広い層にスポーツを普及させるためにも非常に重要な存在だと訴えました。

スポーツが体現する他者理解を社会に

山口さんは、スポーツのフェアプレーの精神ノーサイドの精神が、社会における他者理解に繋がると仰います。フェアプレーとは、どんな相手にも忖度せず全力を尽くして戦うこと、ノーサイドとは、勝敗に関わらず相手を人として尊敬することを指します。このようなスポーツ精神は、全力でぶつかり合える相手がいるから、自分が成長できるという他者理解に基づいています。山口さんは、これを社会に当てはめ多様な意見を建設的に議論し、人々が共に進化していく社会を目指すべきだと訴えました。

 

山口さんは、女性に限らず全ての人にスポーツの平等な機会が与えられるよう努力してかなければならないとし、肌感覚ではなく、その達成度をきちんとチェックするタイトル9のような仕組み作りが必要だと締め括りました。

タイトル9と報告書「日本の教育機関における男女平等の推進」

タイトル9とは教育機関における男女の機会均等を定めたアメリカ合衆国の連邦法の修正法のことです。HRNが2021年1月に発表した報告書では、日本の教育機関における男女平等を推進し、性差別に対処するため、タイトル9と同様の法律を日本においても制定・実施することを文部科学省に対し勧告しています。

後藤副理事長は、日本の教育機関のスポーツ、入試、そしてセクシュアル・ハラスメント(セクハラ)等の性暴力の分野における、タイトル9に習った勧告内容を解説しました。

後藤副理事長によると、学校スポーツに関しては各教育機関に男女のスポーツ機会均等の義化、入試分野においては性別に基づいて学生の教育機会を剥奪することの禁止などが必要であると強調されました。

また教育機関におけるセクハラや性暴力に関して、各教育機関に対し性差別に対処するための専門機関の設置を義務付ける他、実態調査の実施やその調査結果の公開を義務付けることなどが必要だと指摘しました。

現在、各大学によるセクハラや性暴力の防止対策や対処には、不十分な点が多いと言われています。

三浦理事によると、レイプや強制わいせつ、盗撮、デートDVなどに対する大学側の関心は低く、このような性暴力によって特に女性が教育機会にアクセスしにくくなっているという現状への理解も乏しいようです。

三浦理事は、タイトル9を参考に、日本でも同種の法律を制定し、性別・性的指向性自認を理由に学生の教育機会が奪われない環境を保障する責務を大学に負わせることが必要だと改めて訴えました。

 

その後パネルディスカッションでは、スポーツ団体の女性役員を増やすための方策や課題などについて議論が繰り広げられ、質疑応答では多様な質問が寄せられました。

 

 

最後までお読みくださり、ありがとうございました♪

イベントについては、随時ホームページやSNSでお知らせしています!

ぜひHRNの各種SNSフォローをよろしくお願い致します♫

(文=國末りこ)

 

【イベント報告】3/29開催「東日本大震災・福島原発事故から10年。被災地と被災者の今、そしてこれから。」

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【イベント報告】3/29開催「東日本大震災福島原発事故から10年。被災地と被災者の今、そしてこれから。」

 

国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ(以下、HRN)は、去る2021年3月29日(月)、東日本大震災福島原発事故による被害や課題に、この10年間向き合ってこられた3名の方々、岩城恭治さん、村上充さん、森松明希子さんをお招きしトークイベントを開催しました。

 

本イベントでは、2011年3月11日から10年が経ってもなお、被災地や被災者の方々に未だ残る影響や課題、そして新型コロナウイルス感染症がもたらした影響も含めて詳しくお話いただきました。

  

  • 開会の挨拶
  • 岩手県の10年間
    • 岩城さんの活動
    • 今抱える課題とは?
  • 宮城県気仙沼市の10年間
    •  気仙沼市の現状(2021年3月時点)
    • 支援活動の現実
    • 10年経った今、本当に大切なこと
  • 福島原発避難からの10年間
    • 国内避難の現実
    • 森松さんの活動
    • この10年を振り返って ~コロナ禍に見る共通点~
  • 閉会の挨拶
  • おわりに
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*イベントレポート*3月9日開催「刑法改正はどうなっているのか。〜私たちが望む社会に向けて〜」YouTubeでも限定公開!

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※本イベントの動画に関しまして、当初は非公開の予定にしておりましたが、法務省・性暴力に関する刑事法検討会が大詰めを迎える今、より多くの方にご関心をお寄せ頂きたく、期間限定で公開させていただく運びとなりました。刑法改正に向けた更なる後押しとなることを願っております。予定を変更しましたことを、特に本イベントの参加者各位に深くお詫び申し上げます。HRNは、今後も刑法性犯罪規定の改正に向け活動してまいります。皆さまの変わらぬご支援、ご協力をどうぞよろしくお願い申し上げます。

1ヶ月間限定で、本イベントの録画を公開させていただきます。

是非ご視聴ください。

youtu.be

本動画の公開は人権侵害の被害救済を目的としています。登壇者や、被害者の心情を傷つけたり誹謗中傷する恐れがあるコメントはお控えください。

3月9日、ヒューマンライツ・ナウは国際女性デーに合わせてオンラインイベント「刑法改正はどうなっているのか。〜私たちが望む社会に向けて〜」を開催しました。

 

2017年秋に始まった#Metoo運動から3年以上が経過した現在も、フラワーデモなどを通して性暴力に声を上げ、社会を変えようという声が高まっています。

 

現在法務省で行われている性犯罪に関する刑事法検討会では、このような市民の声に応えて、刑法性犯罪規定の改正を進めることが期待されています。

 

そこでHRNは、ジャーナリストの伊藤詩織氏と東京新聞記者の望月衣塑子氏と共に、刑法改正について再考するイベントを開催するに至りました。

 

本イベントでは、中山純子弁護士により検討会の全体報告と重要論点「暴行・脅迫の要件の在り方」「心神喪失・抗拒不能の要件の在り方」「地位・関係性を利用した犯罪類型の在り方」についてご説明いただいた後、HRN伊藤和子事務局長(以下伊藤事務局長)、伊藤詩織氏、望月衣塑子氏によるパネルディスカッションを行いました。

 

刑法177条(暴行・脅迫の要件の在り方)

中山弁護士の報告によると、検討会では、客観的な手がかりとして暴行・脅迫要件は依然として必要であり、「不意打ち」や「偽計」など現行法に記載されている以外で、性暴力に繋がると想定される手段を列挙する必要があるという意見が優勢なのだそうです。もっとも、不同意性交を意味する「その他意に反する」という文言のみで不同意性交罪を規定することについては、慎重な意見が多数であり、「その他意に反する」という文言だけでなく、「被害者の自由な意思決定を困難にし、その状態で性交等を行う」という限定をつける必要があるという意見が述べられています。
 

パネリストの皆さまには、これに関するご意見をお伺いしました

 

伊藤事務局長は「机上の空論ではなく、性暴力の実態を学びそれが救済される形で刑法改正の規定作りをしていく必要がある」とし、現在の検討会での議論の方向性に対し異論を唱えました。

 

日本社会には不同意性交の概念が未だ根付いていないとする慎重派の意見に対して、望月さんは、刑法改正と並行してメディアによる発信や教育を通じた社会規範の育成の必要を訴えておられました。

 

伊藤詩織さんは、現行法のもとで苦しむ被害者を一刻も早く無くすため、少しずつの進歩ではなく、大幅な改正を以て被害の救済にあたって欲しいと訴えておられました。刑法改正は、社会が不同意性交について学ぶ機会にもなると仰っていました。

 

刑法178条(心神喪失・抗拒不能の要件の在り方)

検討会では、抗拒不能に何が該当するか明確でないために、裁判官によって判断にブレが生じるという現行法運用上の課題が挙げられています。これを明確にすべく付け加える文言として「人の無意識、睡眠、薬物の影響、酩酊、疾患、障がい、洗脳、恐怖、困惑」などの意見が出ており、今後も議論が進められていきます。

 

パネルディスカッションでは、さまざまな意見交換がなされました。

 

これまで数々の性暴力犯罪の取材に取り組んできた望月さんは、障がいのある被害者の証言は信用されにくく、起訴までのハードルが格段に高くなっていると解説してくださいました。この観点から「障がい」という文言を列挙することには大きな意味があるとお話しされました。

 

伊藤事務局長は、文言が被害の実情に沿うのかどうか懸念を示しました。例えば「酩酊」は、泥酔して意識のない状態しか認められず、意識があっても身体が動かない状況などが考慮されない可能性があります。他にも「恐怖」や「困惑」など被害者心理が救われる規定ぶりを設けることが重要だと指摘しました。

 

地位関係性利用等罪の創設(被害者の年齢を問わず脆弱性・優劣・関係性を利用した場合の処罰規定を設けるべきか)

検討会は、賛否の意見で分かれているそうです。多くの場合において、被害者は抵抗できない状況に置かれている実態や、加害者側の「黙っているから同意だと思った」などの弁解が数多く認められていることなどを考慮し、地位関係性利用等罪の創設は必要だとする意見と、無害な行為が処罰される恐れを考慮する慎重な意見があるそうです。

 

これについて伊藤事務局長は、被害者がフリーズした場合でも罪に問えるようになることから、地位関係性利用等罪は多くの被害の受け皿となり、創設は絶対に必要だと解説しました。

 

ゲストのお二人も、地位関係性利用等罪の必要性を訴えました。

 

望月さんは、新たな処罰規定の創設が社会の倫理観を育て、社会的規範を変え、これが性暴力犯罪を抑制することに繋がるとお話しされました。そして、一歩踏み込んだ刑法改正が必要だと強く訴えました。

 

伊藤詩織さんもこれに続き、被害当事者でないと分からない恐怖や抵抗できない理由が法廷で認められないケースは数を知れず、被害実態にしっかりと目を向けてこれを重く受け止めて欲しいと語られました。

 

この後もパネルディスカッションは続き、性暴力事件の捜査における二次被害や、被害者支援制度の拡充などさまざまな観点から議論がなされました。

 

刑法改正実現に向けて

最後に、刑法改正にかける思いをお一人ずつに語っていただきました。

 

伊藤事務局長は、手紙や要請書を提出するなど私たちにできることを行い、検討会に向けて市民の声を突き付けていくことが大切だと締め括りました。

 

伊藤詩織さんは、不同意性交等罪の創設を何としてでも実現し、被害者の気持ちを汲み取るという当たり前のことができる社会になって欲しいと訴えました。

 

望月さんは、市民の声で社会を動かしていくため、今後もメディアを通して人々に向けた啓発を行っていきたいと意気込みを新たにしました。

 

最後まで読んで下さり、ありがとうございました!

このようなイベントを通して、今後も皆さまとお会いできるのを楽しみにしています♪

(文=國末りこ)

 






【イベント報告】 3/25開催ウェビナー「ミャンマーの民主主義を守るために~官民の責任~」 YouTubeでも限定公開!

 

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2021年3月25日 ㈭、ヒューマンライツ・ナウ(以下、HRN)は、ヒューマン・ライツ・ウォッチメコン・ウォッチ、日本国際ボランティアセンター、ビジネスと人権市民社会プラットフォームと共催でウェビナー「ミャンマーの民主主義を守るために~日本の官民の責任~」を開催しました。2月1日にミャンマー国軍がクーデターを起こして以来、ミャンマーの民主主義は危機に晒され、死傷者も恣意的に拘束された人々も日に日に増えています。

本ウェビナーでは、ミャンマーでのCDM(市民不服従運動)の展開、ミャンマーでの事業活動と民主主義、企業の責任、日本政府の対応、そしてミャンマーの方々の声を伺いました。イベントの様子をお伝えいたしますので、ぜひ、最後までご覧ください。

 

この問題は非常に深刻なもので、ぜひ一人でも多くの方に知っていただきたいので、ウェビナーの様子を三か月限定で公開いたします。ウェビナーへの参加がかなわなかった皆様も、ぜひ動画でご覧いただけますと幸いです。

当日の動画はこちらから: https://www.youtube.com/watch?v=uIMyPeg109o

 

www.instagram.com

また、HRNのインスタグラムでも、ミャンマーのクーデターについての投稿を3つしているのでそちらもあわせてご覧ください!

 

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当日は、日本国際ボランティアセンター(JVC)の渡辺直子さんが司会進行を務めました。

はじめに、上智大学総合グローバル学部教授、根本敬さんに市民的不服従(CDM: Civil Disobedience Movement)の広がりと国軍の対応についてお話しいただきました。現在ミャンマーでCDMが行われており、その背景にはアウン・サン・スー・チー氏が長年にわたって訴えてきた「不当な権利と命令には義務として従うな」というメッセージがあります。今回のCDMの特徴をいくつか紹介したいと思います。

  • 軍政時代の経験のない、その時代の恐怖などを体験していない若者たちがSNSなどを用いて、世界に発信しています。非暴力による抵抗として、SNSなどで海外に現場中継を行い国を超えた横の連帯を形成しています。
  • 公務員(在外公館大使や外交官、警察)などが多数CDMに参加しています。また与党NLDはCDMの広がりとともに対抗政府CRPHを設立しました。国軍による市民への「暴力的封じ込め」は国際世論の強い反発を呼んでいます。そのため、今回のクーデターで国軍はテロリスト化し、追い込まれている状況にあると言えます。

 

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次に、星槎大学共生科学部教授、細田満和子さんから「ミャンマーロヒンギャ~人々の生活と望み~」としてご講演いただきました。ロヒンギャとはミャンマーラカイン州に住みベンガル語を話すイスラム少数民族です。2017年のジェノサイドにより70万人が難民化したといわれています。ミャンマーが1948年に英国から独立し建国された当時、ロヒンギャミャンマーの一員でしたが、1970年代の軍のリーダーによる「ロヒンギャミャンマー人ではない。」との発信や軍の力や刷り込みにより現在の状況が生まれているとご指摘がありました。また難民キャンプ内で若者が中心になって行っている様々な活動の紹介や、2021年3月22日の火災により食料センターなどが焼失しクーデター禍でも危機的状況にあり、さらなる支援が必要な現状についてお話いただきました。

 

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続いて、ヒューマン・ライツ・ウォッチ笠井哲平さんに日本政府の対応についてご紹介いただきました。まずは各国の対応の事例として、米、英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国などの対象限定型経済制裁(国軍の高官や、軍系企業の利益につながる支援の停止、国軍の高官への渡航禁止や資産凍結など)を日本の対応と比較して説明いただきました。日本は、G7での声明や、記者会見、軍によって外務大臣とされた者との対話などを行い、1. 民間人への暴力の停止、2. アウンサンスーチー氏や関係者の解放、3. 民主的な政治体制の回復を訴えています。日本は軍との独自のパイプを活用することを期待されていましたが、具体的な成果はいまだなく、上記の国々が行っているような対象限定型経済制裁などの制裁には消極的で2カ月近く行動はありません。また、ODA(政府開発援助)の一時停止を行うとの報道はあったものの外務省は否定しています。日本の起こすべき具体的なアクションとして、1. ODAの見直し、 2. 人道的支援以外の停止、3.対象限定型経済制裁の三点を言及されました。引き続き日本政府への積極的な対応を求めていく必要があります。

 

 

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そして、リンクルージョン株式会社の黒柳英哲さんからは、ミャンマーで事業を行う企業としての対応のジレンマについて現地の日本企業の視点からご講演いただきました。現在、大手や中小企業、またスタートアップ企業を含め600社もの日系企業ミャンマーに進出しており、430社が日本商工会議所に参加しています。日本の商工会議所は、他国からは少し遅れ、3月15日に共同声明を出しました。現地の企業は、ミャンマー市民やCDMに賛同したくても、なかなかできないジレンマが存在するといいます。黒柳さんは、いろいろな企業の方々に行ったインタビューの内容を共有して下さいました。例えば、小さな企業にとっては軍に危害を加えられるリスクが圧倒的に高いという問題、また軍系の家族の雇用を維持するのかという問題、大きな企業にとっても、大使館と連携し方針に反することがないように足並みをそろえようとするためアクションが遅くなるといった問題です。また企業としての政治的発言をすることに対する抵抗感や日本の本社との温度差があることもあるものの、独自で声明を出すか検討中の企業もあるということでした。

 

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続いて、HRN佐藤暁子事務局次長より、ビジネスと人権の観点から企業に求められることについて話をしました。まず国連ビジネスと人権に関する指導原則(2011)や日本が公表した行動計画(NAP)(2020)でも言及されている、企業が国際人権基準を尊重する責任を負うというように政府も行動していく義務について言及しました。また人権デューディリジェンスというプロセスが重要性が強調されました。企業は、サプライチェーンバリューチェーン全体の中で人権に関する負のインパクトが生じていないかどうかを積極的に特定し、防止や軽減をする、そして結果を追跡調査し、影響にどのように対処したかを伝えるという責任があります。直接的な人権侵害だけでなく、取引先のその先の企業などが行っている人権侵害に加担していないかという点も重要になります。また、企業の対応の例として、アディダスフェイスブック(インスタグラム)、H&M、商工会議所、日本商工会議所などを紹介しました。

 

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次に、メコンウォッチの木口由香さんからは、日本からミャンマーへのODAミャンマー経済や国軍への影響についてご紹介いただきました。日本は2018年度までにODAで、有償資金協力(約1兆1368億円)無償資金協力(約3229億円)、技術協力(約984億円)の支援を行ってきたそうです。ヤンゴンマンダレー鉄道の整備、送電システム、通信システムの整備などが実施されてきました。それと同時に、ミャンマーの経済活動の8割ほどが国軍関係の企業などが関係しているとも言われる中で、日本のODAが間接的に軍に経済的利益を与えた可能性が高いことが明らかになってきました。国防省が所有している土地で事業を行っている企業もありましたが、国防省(=国軍)は政府から独立した存在で政府の監査対象外であるという問題点が指摘され増した。ビジネスやODAによる支援を行う前に、そのような国軍とのつながりや背景の把握が必要だったと言えます。

 

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そして、日本ビルマロヒンギャ協会会長のゾーミントゥさんと、アウンラーさんに日本社会に伝えたいことについてお話いただきました。このような軍事クーデターによって国民、特に少数民族が一番厳しい現状にあるといいます。200人以上が命を落とし、1000人以上が怪我、2000人以上が逮捕されて、殺害された人もいるという厳しい現状があります。日本の企業や政府は国民の応援をしてほしい、同じ人間が困っているので助けてほしいというミャンマー市民社会の声を伝えてくださいました。またゾーミントゥさんは、外務省に直接働きかけ、ODAなどを止めてほしいということを訴えたそうですが、曖昧な返事だったそうです。そのため、日本の国民の皆さんから日本政府へミャンマー軍との関係を断つように訴えてほしいとのメッセージを伝えていただきました。またアウンラーさんは、日本の皆さんがこんなに興味を持ってくれていることに対して驚きと嬉しさを感じると同時に、日本政府の曖昧な対応などに悔しさを感じていると訴えられました。その背景には、前回のクーデターによる苦しい経験、歴史があります。今回で3回目の軍によるクーデターで、前回約30年前のクーデターの時、日本の支援が国軍に渡り、武器などの調達に使われ多くの国民の命が奪われたという過去があります。そのため、より一層ミャンマー国民のために日本政府の明確な対応が求められます。

 

今回のウェビナーでは、ミャンマーでのCDMの広がりと現状、ロヒンギャや難民キャンプの現状、それから日本政府、企業、国民それぞれに求められる行動について多角的にお話いただきました。詳しい内容については、ぜひ動画をご覧ください。

 

また前回2021年2月18日に開催したウェビナー「ミャンマー軍の国際人権・人道法違反と企業の責任を考える(https://www.youtube.com/watch?v=dTr6k94c_Kw&t=1s)」もYouTubeで公開中なので、ぜひそちらもご覧ください!

 

HRN女性の権利プロジェクトとは?

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NPO法人ヒューマンライツ・ナウ(HRN)女性の権利プロジェクトのインターン、りこです💐

今回のブログでは、女性の権利プロジェクトはどういった問題意識を持って、どのような活動に取り組んでいるのかご紹介します!

 女性の権利プロジェクトとは?

国内外における女性の人権を守ることを目標としています。

世界には、女性であるというだけで自由な生き方を奪われたり、かけがえの無い命まで奪われたりする女性が多くいます。戦争・紛争下の女性に対する暴力、名誉殺人、子どものまま結婚を強いられる少女婚、女性器切除の慣習、レイプや強制売春など、性別を基にしたこのような女性の人権侵害は、深刻な問題です。

日本においても、女性の人権問題は山積みです。騙したり強要したりして女性をアダルトビデオ出演に追い込むAV出演強要問題や、性暴力被害の実情にそぐわない現行の刑法、セカンドレイプやDVなど、人権侵害は社会の至る所に存在しています。

女性の権利プロジェクトは、このような女性の人権侵害を一日でも早く無くすため、実地調査、政策提言、イベントやソーシャルメディアを通した啓発活動などを行い、日々活動しています✊

どんな活動をしているの?

調査報告

 国内、国外問わず女性の人権侵害を無くすためには、まず状況を把握することが必要です。

私たちは実態調査を行い、その報告書を公開しています。

2016年には、AV出演強要の被害実態を調査、報告書「日本:強要されるアダルトビデオ撮影 ポルノ・アダルトビデオ産業が生み出す、 女性・少女に対する人権侵害」を公表し、厚労省をはじめとする関連機関に対し勧告しました。

他にも、性犯罪に関する日本と世界の法制度比較調査の報告や、女性に対する各国の差別的な処罰に関わる調査報告日本の教育機関における男女平等に関する調査報告など、女性の権利に関わる様々な問題に着目し、その実態を報告しています。

政策提言

女性の権利や女性のニーズといった観点から様々な提言を行い、政策を動かします。

例えばDVやストーカー被害により若い女性たちが殺されるという事態が相次いだ2011年から2012年にかけては、DV防止法を、より実効性のあるものへと改正することを求めて提言書を提出、国連組織UN Womenと連携したキャンペーンを展開するなどして、第三次DV防止法改正に影響を与えました。詳しくは、こちら

また近年では、性暴力被害の実情にそった刑法性犯罪規定への改正を目指し、改正案を提言、市民団体と協力しキャンペーンを打ち出すなどの働きかけを行っています。

啓発活動①:ソーシャルメディア

ここまで読んで、少しおカタイな、なんだかとっつきにくいな、と感じた方もいるかもしれません🙌

私たちは、女性の権利問題をもっと身近なものとして捉えてもらうために、ソーシャルメディアを通してさまざまな情報を発信をしています!

Instagram

 Twitter

女性の権利問題に関わるニュースをピックアップし、コメントや解説を加えてお届けしています!

ぜひ、HRNの各種ソーシャルメディアをフォローしてください!🌷

啓発活動②:イベント

イベントは、皆さんと一緒に女性の人権を考える貴重な機会です!

講師の方をお招きする勉強会や、多様な分野で活躍されるゲストの方々を迎えたさまざまなイベントを開催しています。

早速、近日開催予定のイベントをお知らせします✨

4月2日(金)19:00〜 ウェビナー「スポーツと機会の平等ータイトル9の理念をどう反映させるのかー」

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スポーツにおける日本の男女平等は、あらゆる点で遅れています。当ウェビナーでは、JOC理事で筑波大学教授、ならびにソウル五輪女子柔道銅メダリストの山口香さんと共に、スポーツにおける男女平等を推進するための方策を考えます。

 このイベントのお申し込み&詳細はこちら

 皆さんのご参加、心よりお待ちしております!

 まとめ

女性の権利プロジェクトは、日本国内、世界の女性の人権侵害を無くすことを目標に活動している。テーマとする問題は、少女婚や女性器切除の慣習、刑法性犯罪規定改正やAV出演強要問題などさまざま!

活動の種類には、主に調査報告、政策提言、ソーシャルメディアやイベントを通した啓発活動などがある。

各種ソーシャルメディアのフォローと、イベントのチェックをお忘れなく!🌻

 

 

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

次回の女性の権利プロジェクトのブログもお楽しみに✨

(文=國末りこ)

 



HRNビジネスと人権プロジェクトとは?

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NPO法人ヒューマンライツ・ナウ(以下HRN)のビジネスと人権プロジェクトのインターン、塚本・石田・豊吉です。初めまして!これから、こちらのブログでもビジネスと人権に関連する様々な情報を発信していきます!

今回は、第一回目の更新ということで、ビジネスと人権プロジェクトではどういった問題意識を持ってどのような活動に取り組んでいるのか紹介しようと思います。

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12/15開催世界人権デー記念イベント「コロナ禍が映し出す女性の人権状況」*イベントレポート*

見出し画像12/15開催世界人権デー記念イベント「コロナ禍が映し出す女性の人権状況」*イベントレポート*
 

12月15日、ヒューマンライツ・ナウ関西グループは世界人権デーに合わせて、「コロナ禍が映し出す女性の人権状況」と題したウェビナーを開催しました。(主催:ヒューマンライツ・ナウ 関西グループ 共催:ヒューマンライツ・ナウ)

 

新型コロナウィルスの影響で世界中の人々の暮らしや人権に様々な制約が課せられる中、DVなどの女性に対する暴力の増加が指摘され、国連も懸念を示しています。

ゲストは2015年から2年間、国連の女性差別撤廃委員会委員長を務められた林陽子弁護士。ご自身の委員としての経験もふまえ、コロナ禍での女性の人権状況について語っていただきました。

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